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原発新増設 慎重姿勢か エネ計画見直し 「上関」の今後を左右

 政府のエネルギー基本計画の見直しに向け、経済産業省の有識者会議「エネルギー情勢懇談会(情勢懇)」が今月末にも提言を取りまとめる。東京電力福島第1原発の事故から7年。原発への反対の声は根強く、新増設の必要性には踏み込まないとの見方が強まっている。中国電力上関原発(山口県上関町)の工事再開が当面難しくなる可能性がある。(河野揚)

 2月27日に省内であった7回目の情勢懇。米国企業幹部から次世代原子炉などの説明を聞き、昨夏から続けてきた外部からのヒアリングを終えた。今後2回会合を開き、2050年のエネルギー政策への提言をまとめる予定だ。

 提言では原発について、より安全な技術開発の重要性などを盛り込む見通し。ある経産省幹部は「まずは原発の社会的な信頼回復が重要」と説明する。

 経産省は新増設の是非を議論すべきだとの意見はあるが、新増設が必要という議論にはなっていないとみている。原発に根強い反対がある世論を踏まえ、官邸や与党側にも新増設への慎重論があるとみられる。

 新増設について、経産省は情勢懇の提言をエネルギー基本計画に反映させる考え。別の審議会の議論を経て、6月までに新たな基本計画の閣議決定を目指す。同計画の見直しは、上関原発の今後を大きく左右する。

 上関原発は福島の事故を受け、工事が中断したままだ。山口県の村岡嗣政知事は、発電所本体の着工時期の見通しがつくまでは埋め立て工事をしないよう、中電に要請している。政府が同計画で新増設を容認しなければ、中電は建設できない。

 同計画は3年に1度見直しが検討され、今回新増設の必要性が明記されなければ、次の機会は3年後になる。中電の清水希茂社長は1月の記者会見で「原子力は重要な電源。新増設を考えていく必要がある。ぜひそういった議論を深めてほしい」と国に求めた。

 一方、上関町の反原発団体などは、同計画で原発新設中止を盛り込むよう国に求める署名活動を展開している。

(2018年3月11日朝刊掲載)

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