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[イワクニ 地域と米軍基地] 残る艦載機 移転開始 1機到着 近く配備完了

 米軍岩国基地(岩国市)へ厚木基地(神奈川県)から空母艦載機約60機が移転する計画で、最後に残っていたFA18スーパーホーネット戦闘攻撃機2部隊(24機程度)の移転が26日、始まった。近く全機の配備が完了する見通し。岩国基地所属機は約120機と移転前から倍増し、極東最大級の航空基地となる。

 この日は1機が午後5時33分、滑走路に着陸。昨年に移った他の艦載機が並ぶ駐機場へ向かった。在日米海軍司令部(神奈川県横須賀市)は中国新聞の取材に、この1機の飛来を「一連の移駐の一環」と明らかにした。

 残る2部隊の移転について、中国四国防衛局は23日、「24日ごろから移る予定」と岩国市や山口県に伝えていた。国は当初、移転完了時期を「5月ごろ」と説明していたが、前倒しされる見通しとなった。

 スーパーホーネットは対地、対空攻撃に優れた米海軍の主力戦闘攻撃機。米海兵隊所属の従来型ホーネットに比べて機体が一回り大きく、エンジン出力も大きい。派生型のEA18Gグラウラー電子戦機を含め、厚木基地周辺の騒音被害の主因とされてきた。

 移転計画は、在日米軍再編の一環で日米両政府が2006年5月に合意。岩国市や山口県など地元自治体は17年7月、国に受け入れ容認を伝えた。8月に第1陣のE2D早期警戒機5機が到着。11~12月にはスーパーホーネット2部隊(24機程度)とグラウラー部隊(6機程度)、C2輸送機1機が配備された。

 艦載機移転に伴い、米軍人約1700人と軍属約600人、その家族約1500人の計約3800人も岩国基地へ移る。同基地の米軍関係者は1万人を超え、岩国市の人口の1割弱に匹敵する規模になる。

 また、艦載機が所属する第5空母航空団の司令部機能も、約60機の移転に合わせて厚木から岩国に移る。昨年8月、岩国基地内に完成した司令部庁舎は既に米側へ提供され、機能を移す準備が進んでいるという。(松本恭治、久保田剛)

【解説】 地域の安心安全 道半ば 騒音や治安 懸念

 米軍岩国基地(岩国市)への空母艦載機の移転計画は26日、最後に残っていたFA18スーパーホーネット戦闘攻撃機2部隊の一部が到着し、最終段階に入った。イワクニが極東最大級の軍事拠点に変貌する計画は、米側の事情で当初から前倒しされる見通しになった。一方で、日米双方で地域の安心安全を確保する取り組みは道半ばだ。

 住民の暮らしに直接関わる騒音被害。移転第2陣のスーパーホーネットなど約30機が到着した昨年12月以降、基地周辺では騒音測定回数が増加し、岩国市への苦情も相次いでいる。最後の2部隊が加われば「うるささ」は悪化し、運用次第で広島県西部・北部や島根県西部にも影響が広がる恐れがある。

 米軍機の安全性や治安の課題も積み残す。沖縄を中心に不時着や部品落下などのトラブルが後を絶たず、岩国周辺でも懸念は広がる。米軍人たちの犯罪や交通事故を不安視する声も根強い。

 こうした中でも、市や基地、山口県で米軍機の運用ルールなどを話し合う岩国日米協議会は1991年を最後に開かれていない。確認事項の一部は形骸化し、守られない例も目立つ。また、艦載機移転計画に絡み市が2008年、国に求めた安心安全対策のうち、米兵犯罪に絡む「日米地位協定の見直し」などは未達成のままだ。

 市は安心安全対策を巡る国との協議を続け、騒音被害の実態把握に努めるとする。四半世紀ぶりとなる日米協議会の開催の検討にも乗り出した。ただ、惨事が起きてからでは遅い。国や関係自治体はあらゆる事態を想定した対策を講じ、速やかに地域に示す努力が求められる。(松本恭治)

(2018年3月27日朝刊掲載)

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