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土壌セシウム 細菌で回収 福島で成功 農地応用に期待

 広島国際学院大(広島市安芸区)工学部の佐々木健教授(63)のグループが、細菌を使って福島県の土壌から放射性物質を回収する実験に成功した。昨夏、汚染ヘドロからの回収に成功していたが、今回の技術は農地や山林で利用できるため、実用化が期待される。成果を基に広島大などと共同で行う汚染物質の減量研究は文部科学省の助成事業に採択された。

 実験は、同県南相馬市で昨年12月からことし2月にかけて行った。汚染された腐葉土に水や乳酸菌を加えて発酵させ、光合成細菌の一種「ロドバクタースフェロイデスSSI」をアルギン酸と混ぜて作ったビー玉状の粒を入れると、セシウムが粒に吸着する。

 24日後に粒を除いたところ、放射線量が毎時10・56マイクロシーベルトから同3・52マイクロシーベルトに67%減。セシウムを取り込んだ粒は乾燥、焼却させると容量で97%減の灰になり、保管スペースが大幅に縮小できる。焼却時に放射性物質の外部拡散もないという。

 細菌にはカリウムを取り込む能力があり、似た性質のセシウムを吸収できたと考えられるという。ヘドロで成功した方法に乳酸菌を加えるなどの工夫で、吸着効果が約1・5倍増したとしている。

 同教授グループと広島大(メタンガス発酵)▽静岡大(乳酸菌による木質分解)▽森林総合研究所(樹木の微粒子化)の計4グループが、共同で汚染物質減量化技術の開発を計画。復興予算で行う文科省の「原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブ」に採択され、3年間で計約1億円の助成が決まった。

 同教授は「ヒロシマの学者として放射線被害の対策に役立てればうれしい。バイオは常温で使え、薬剤と違って農地にも優しい。早く福島で実用化させたい」と話す。(田中伸武)

(2012年11月27日朝刊掲載)

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