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艦載機移転完了 岩国 懸念と「共存」 思い交錯

騒音増 岩国市民実感 米軍 最後も「事後報告」

 米軍岩国基地(岩国市)への空母艦載機移転計画の完了が31日、国から市などに伝えられた。しかし、米側は、その前日に移転を終えていた。極東最大級の航空基地へと変貌する大きな節目が地元に「事後報告」となり、運用実態が見えにくい基地の現実を突き付けた。市民には、安全安心への懸念と「基地との共存」への思いが交錯した。(久保田剛、藤田智、馬上稔子)

 31日午後2時10分ごろ。市基地政策課に中国四国防衛局から電話が入った。「米軍から、移転は30日に完了したとの連絡があった」

 在日米海軍司令部(神奈川県横須賀市)は28日、今週中に移転を終えると発表していた。一方、国は、最後に残っていた2部隊(24機程度)の移転開始日の目安を「24日」と公表。同日以降、2部隊の半分程度の機体しか岩国への飛来は確認されていなかったとみられる。

 移転完了が事後報告になったことに関し、岩国市の担当者は「国がいつ完了を知ったのかについて特に説明がなく、分からない」と話した。

 岩国基地を見渡せる川沿いの土手。31日、基地の格納庫前には艦載機がずらりと並んでいた。「米軍機を見る回数が明らかに増え、騒音も激しくなった」と車第3自治会の藤本雄三会長(69)。基地との境界から約100メートルの所に暮らす藤本会長は、移転が本格化した昨年11月末からの変化を実感する。

 「騒音が大きく長く響くようになった」。同市由宇町で鍼灸(しんきゅう)院を営む森本健一さん(56)も表情を曇らせた。全盲で音が頼り。ジェット戦闘機のごう音は頭に残る。「行政も米軍も、住民の切実な声を受け止めて対策を考えてほしい」

 岩国市内を車で走ると、「Y」の文字が入ったナンバープレートが目に付く。米軍関係者が乗る私有車両だ。米兵やその家族たち約3800人の移動も今年後半までに終わる予定という。事件事故の増加を懸念する声も強まる。

 「米兵の犯罪を許さない岩国市民の会」の大川清代表(59)は「激しい訓練で重圧にさらされた米兵が増える。基地と犯罪は、簡単に切り離せない」と危機感を強めた。

 移転の「メリット」を実感するとの声も広がる。基地負担に伴う市への国の補助金や交付金は、子どもの医療費無料など、幅広い行政サービスに活用されている。

 基地から西へ約3キロ。艦載機移転に伴って整備された野球場「絆スタジアム」がある。周辺の芝生広場ではこの日も歓声が響き、家族連れがバーベキューを楽しんでいた。「事件が起きる不安はある。でも基地で働く市民も多く、こういう有意義な施設もできる」。同市の主婦(37)は、楽しそうに遊ぶ3人の子どもを見やった。

(2018年4月1日朝刊掲載)

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