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坪井氏に名誉市民称号 広島市 被爆体験継承に尽力

 広島市は5日、国内外で核兵器廃絶の機運を高め、被爆者援護の充実や被爆体験の継承に力を尽くしたとして、日本被団協代表委員で広島県被団協理事長の坪井直氏(92)=西区=に名誉市民の称号を贈った。

 市役所であった贈呈式で、松井一実市長から名誉市民称号記を受け取った坪井氏は「身に余る光栄。皆さんとともに平和な世界をつくるため一緒に頑張りたい。名前の通り素直に、燃えて燃えて燃え尽きるまで頑張ります」とあいさつした。

 松井市長は「市も、坪井さんの寛容の心、ネバーギブアップの精神で、人類の幸せには核兵器は必要ないと世界に訴える。ともに力を尽くしてほしい」と期待を込めた。

 坪井氏は呉市音戸町出身。広島工業専門学校(現広島大工学部)3年だった1945年8月6日、爆心地から約1・2キロの富士見町(現中区)の路上で被爆し、全身に大やけどを負った。戦後は中学校教諭として、生徒に自身の体験を語り続けた。86年に中学校長を退職後、被爆者運動の先頭に立って核兵器廃絶を訴えている。

 名誉市民は63年以降、21人目。直近では2010年に服飾デザイナーの三宅一生氏とバレリーナの森下洋子氏の2人に贈っている。(永山啓一)

「核なき世界 諦めない」

 広島市の名誉市民となった広島県被団協理事長の坪井直氏は5日、「そんなに立派な人間でもないのに、私が歩んできたことを評価していただいた」と謙虚に喜んだ。贈呈式やその後の記者会見で、力を尽くしてきた被爆者運動を振り返り、核兵器廃絶と世界平和に向けた活動の継承を願った。

 最も印象に残っていることとして真っ先に挙げたのは2016年5月、平和記念公園(中区)を訪れたオバマ米大統領(当時)との面会。「一緒に核兵器のない世界をつくろうと話した。誓い合ったことを、ネバーギブアップで頑張りたい」

 原爆投下国の現職大統領が初めて被爆地を訪れると聞いた時を「うれしくてうれしくて、寝られないぐらいだった」と振り返り、オバマ氏の広島再訪に期待を示した。

 一方、国連で核兵器禁止条約が採択されたにもかかわらず、トランプ米政権は2月、新たな核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」で核兵器の役割を拡大する方針を明らかにした。「情けない。核兵器廃絶のために心血を注いできたが、小競り合いを含め、戦争をいかになくすかも考えないといけない」と語気を強めた。

 現在もがんや心臓病、貧血などと闘っている。自身の体調を「年がら年中、悪魔に襲われている」と表現し、この日も車いすで市役所を訪れた。今後の活動について「あれこれできると思っていない。段ボールに入れたままになっている私の活動の資料や写真を整理したい」と語った。(永山啓一)

(2018年4月6日朝刊掲載)

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