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伝承者派遣 募集停止へ 広島・原爆追悼祈念館 申し込み相次ぎ

 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)が本年度始める、市の被爆体験伝承者と被爆体験記や原爆詩を朗読するボランティアの無料派遣事業への申し込みが相次ぎ、近く募集を停止する見通しであることが6日、分かった。3月1日の募集開始から1カ月余りで全国から約120件の依頼があり、必要経費が本年度分の国の予算額を超えそうなため。同館は「小中学校を中心に予想以上の反響があった」とする。(水川恭輔)

 派遣事業は広島市内を除く全国の学校、団体などが実施する平和学習の研修会や催しを想定し、同館側が伝承者たちへの謝礼金と旅費を支払う。国が本年度予算に長崎の祈念館分と合わせて3千万円を計上し、広島分は2千万円。予算内で原則、先着順に派遣を決め、海外派遣も予定する。

 祈念館が年明けから各都道府県の教育委員会などを通じてPRしたところ、修学旅行で広島を訪れる予定の県外の小中学校を中心に申し込みが相次いだ。「修学旅行の前後の平和学習として注目されているようだ」と同館。大阪府など近畿地方が目立ち、北海道など遠方もあるという。

 現在、申し込みを精査中で、約120件のうち100件程度は派遣が確定する見通し。だが、4月以降の受け付け分は予算内に収まらない可能性もあり、派遣できるかどうか「五分五分」(同館)という。当初は募集期限を設けていなかったが、締め切りが必要な状況。所管する厚生労働省は「追加の予算措置は考えていないが、来年度の予算額は本年度の申し込み状況も踏まえて検討したい」とする。

 申し込みは、朗読ボランティアよりも伝承者の希望がやや多い。市平和推進課は「被爆者が遠方に出向くのは体力的な負担が大きくなる中、各地で被爆者の思いと被爆の実態を伝えてほしい」と期待している。

 国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館(長崎市)には家族や知人の被爆体験を伝える「家族・交流証言者」と朗読ボランティアの派遣に全国から約40件の申し込みがあった。「まだ受け付けの空きはあるが、各地から関心は高い」という。

(2018年4月7日朝刊掲載)

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