×

ニュース

[イワクニ 地域と米軍基地] ナベヅル越冬地 米軍機か 周南・八代地区で目撃相次ぐ

飛来に影響 懸念も

 本州唯一のナベヅルの越冬地、周南市八代地区の上空で米軍岩国基地(岩国市)に関連するとみられる機体が相次いで目撃されている。3日に輸送機オスプレイ、2月には同基地所属の戦闘機とみられる機体を住民が確認。「ツルが来なくなるのでは」と心配する声が上がっている。(桑田勇樹)

 八代の団体職員細川智弘さん(35)によると、今月3日午後4時50分ごろ、オスプレイ2機が八代上空を岩国基地方面に飛び去るのを見た。「民間機とは違う重低音を感じた」という。2月9日には戦闘機4機を確認。一緒に見た30代男性は「比較的低い位置を一瞬で通り過ぎたが、ゴーというすごい音が響いた」と話す。

 細川さんによると、ここ数年、八代地区でオスプレイが飛ぶのを何度か見たが、米軍戦闘機の飛来などは確認していないという。

 八代には今季、ツル9羽が飛来。戦闘機が目撃された2月9日時点で8羽がいた。その後飛来した1羽も含め、3月30日までに全羽が繁殖地のシベリアに向け飛び立った。

 ツル類の保全や研究関係者でつくる日本ツル・コウノトリネットワーク(北海道)は「越冬地での戦闘機の飛行などを確認した事例がなく、高度や音量などのデータがなければ鳥への影響の評価は難しい」と指摘する。一方で「飛来初期のツルは特に周囲の環境に敏感なので過度な刺激は避けたほうがいい」という。

 八代上空では2016年2月、陸上自衛隊所属のヘリコプターが飛行し周南市が自粛を要望。今季の越冬期間中は米軍機などの飛来を市として直接確認しておらず、要望などは考えていないという。細川さんは「ツルへの影響が心配だ。市は国を通じるなどして、少なくとも冬場は八代を避けてくれるよう働き掛けて」と訴える。

周南市八代
 全国で最も早い1887年からツル保護に取り組む。1921年、当時の八代村全域が天然記念物に、55年には特別天然記念物に指定された。住民は、ツルの餌場やねぐらを整備し、飛来時期は工事をしないなど、地区ぐるみでツルの保護に力を入れている。

(2018年4月7日朝刊掲載)

年別アーカイブ