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アート通じて原爆と向き合う 宮島工業高教諭で被爆2世の林さん 平和の尊さ継承訴え

生徒とデザイン画4点

 廿日市市の宮島工業高インテリア科教諭で被爆2世の林忠一さん(57)が、生徒と一緒にアートを通じて原爆と向き合っている。2017年度は3年生10人とデザイン画4点を創作。被爆者の体験や平和の尊さの継承を訴える。(森戸新士)

 原爆投下前の広島から被爆の惨状、戦後の復興、現在、未来へと時の流れを表現する連作。高さ約1・3メートル、幅約1・1~1・6メートルで、9カ月間かけて制作した。過去の生徒によるCGも再活用した。

 二宮魁星(かいせい)さん(18)は「先輩の作品に触れて、世代を超えた平和への願いを感じた」と振り返る。

 林さんが、授業で原爆をテーマに創作を始めたのは1991年。「原爆ドームはどんな形をしていたのか」という生徒の問い掛けをきっかけに、被爆前後のドームをCGで再現することに挑んだ。

 ただ、陶芸家で被爆者の父忠行さんに制作中の作品を見せると、「こんなにきれいじゃなかった。心が伝わらない」。解像度などの技術ばかりに頼っていることに気付かされた。

 被爆者から建物の色を聞いたり、資料を読み込んだりして、94年に16場面のビデオ作品(3分)に仕上げた。95年以降も、生徒に原爆や平和を意識させる創作に取り組んだ。広島市や県の被爆関連事業でのCG制作にも協力してきた。

 今年1月、忠行さんは82歳で亡くなった。その前、制作中の連作を見て漏らした「頑張っているね」の言葉に手応えを感じられた。

 林さんは「父の思いを継ぎ、生徒と作品づくりを続けたい。作品を平和学習でも使ってもらえればうれしい」と話す。

(2018年4月10日朝刊掲載)

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