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被服支廠見学 初の1000人超 広島の旧陸軍被爆建物 修学旅行増 1号棟補修へ

 広島市最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)を見学した人が2017年度に1102人と、記録が残る07年度以降で初めて千人を超えたことが10日、広島県のまとめで分かった。被爆の爪痕を残す倉庫群に学ぼうと、主に修学旅行の平和学習で訪れる小中学生が増えているという。県は最も北の1号棟に劣化を防ぐ補修を施し、安全に訪れてもらう学習環境づくりにつなげる。(樋口浩二)

 被服支廠は、旧陸軍兵の軍服や軍靴を製造する施設として1913年に完成した。現存するL字形の4棟はいずれもその倉庫。爆心地の南東約2・7キロに立ち、爆風でゆがんだ鉄扉は被爆の惨状を今に伝える。

 県によると、17年度の見学者は1102人で、16年度の921人と比べて19・7%増えた。増加は6年連続。県は06年度以前は見学者が少なかったとして、17年度が過去最多となったのは確実とみている。

 見学の目的別でみると、最も多いのは「平和学習」の967人で、9割近くを占めた。関西、関東地方の小中学校の修学旅行が目立ったほか、保存を求める市民団体が建物内で開く「被爆証言を聞く会」や県内大学による集中講義での訪問もあった。目的別の集計を始めた13年度と比べて2・5倍に伸びており、増加の大きな要因となっている。

 平和学習以外では、自治体職員による視察が59人、報道関係者の取材が29人、建築を学ぶ学生たちの見学が28人と続く。その他が19人だった。

 4棟のうち3棟を所有する県は、平和学習などの場として安全性を高めるため、最も北の1号棟を補修することを決定。劣化を防いで外観を保つ具体的な工法を定める調査費として、18年度一般会計当初予算に900万円を盛り込んだ。夏までには調査を始めたい考えで、補修費の総額は4億円と見込んでいる。

 県は残る2棟についても「被爆者が高齢化する中、建物の役割は高まっている」(財産管理課)として活用策の検討を続ける。県は、耐震化するためには工事の範囲などに応じて1棟当たり12億~33億円が必要と試算しており、財源の確保策が課題となる。

旧陸軍被服支廠
 旧陸軍の軍服や軍靴を製造していた施設で、国内最古級のコンクリート構造物でもある。13棟あった倉庫のうち現存する4棟はいずれも鉄筋・れんが造り3階建てで、県が所有する3棟は延べ5578平方メートル、国が持つ1棟は延べ4985平方メートル。戦後は広島大の学生寮や県立広島工業高の校舎、日本通運の倉庫などに利用されていたが、1995年以降は使われていない。

(2018年4月11日朝刊掲載)

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