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江津の有福温泉荘閉鎖へ 「平和学習の場」惜しむ声

 島根県江津市の原爆被爆者有福温泉療養研究所「有福温泉荘」が来年12月末で閉鎖され、47年の歴史に幕を閉じる。延べ82万4千人が訪れ、被爆者と地元児童の平和学習の場としても親しまれた。利用者や地元からは、閉鎖を惜しむ声が相次いだ。(浜岡学、黒田健太郎)

 有福温泉荘は被爆者の療養と健康維持のため1967年6月に利用が始まり、毎年8月6日の原爆の日に原爆死没者追悼式が開かれている。

 被爆者は体験談を語り、地元児童が「アオギリのうた」を歌って返礼する、平和の尊さを考える場でもあった。江津市教委学校教育課は「身近な平和学習の施設がなくなり広島へ行くしかなくなる」と残念がる。

 閉鎖を余儀なくされた要因は被爆者の高齢化。それに伴い利用者も減り、最盛期の93年は2万2800人だったが11年度は8500人にとどまった。

 2、3カ月に1回訪れている広島市西区の主婦増本一子さん(82)は「何より多くの人たちと知り合える。なくなったら寂しい。何とか残ってほしい」と訴える。有福温泉旅館組合の伊田光雄組合長も「広島からの利用客が減ると有福温泉のにぎわいに響く」と心配する。

 施設は築45年と老朽化し改修費もかさむ。広島原爆障害対策協議会(広島市中区)から運営を受託している運営協議会会長の田中増次江津市長は「多くの被爆者に愛着をもって利用されていた施設が閉鎖されるのは残念。今後、施設の活用方法などを検討したい」と話した。

(2012年12月1日朝刊掲載)

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