×

ニュース

[イワクニ 地域と米軍基地] 米施設内の環境調査中止 国が14年度から 基地外に変更

状況把握できぬ恐れ

 米軍岩国基地(岩国市)など在日米軍施設に対する国の立ち入り環境調査が2014年度以降、中止されていたことが分かった。環境省は「米側と協議したかどうかも含めて公表していない」とし、詳しい経緯や米側の意向の有無について明らかにしない。現在は基地周辺での調査に切り替えている。米軍施設内の環境状況を把握できない可能性があり、専門家は問題視している。(久保田剛)

 立ち入り調査は1972年の沖縄返還後、基地が関与する環境汚染が相次いで判明したのを受け、78年度に始まった。同省によると、調査は水質と大気が対象で、施設内の下水処理施設やボイラーの煙突などからサンプルを採取して確認。主要な基地や施設では、毎年か数年ごとに実施していた。

 13年度は岩国基地や川上弾薬庫(東広島市)、普天間飛行場(沖縄県)など14施設で実施。岩国基地と川上弾薬庫ではボイラーの排煙を調べた。岩国基地では04、08、11年度にそれぞれ水質調査もしている。

 しかし、環境省は14年度以降、全施設で立ち入り調査をやめている。基地外の川の水を採取したり、立地自治体などが収集している大気観測データを確認したりしている。同省水・大気環境局総務課は「基地の外では広範な影響を把握できる。基準を超えた汚染があれば米側に申し入れる」としている。

 在日米軍施設の環境を巡っては、米側は、日米双方の環境基準を踏まえた独自基準に基づき環境保護に取り組む、と日本政府と合意している。

 一方、日米地位協定では日本側に環境調査を認める規定はなく、事故が起きても米側の許可がなければ実施できない。このため両政府は15年9月、同協定の「環境補足協定」を締結。環境事故が発生した場合、米側は「妥当な考慮」を払うとしたが、立ち入り調査は確約されていない。

 米軍問題に詳しい沖縄国際大の前泊博盛教授は「調査は明らかに後退している。住民生活に影響の大きい環境問題は厳しくチェックする必要があり、米側と交渉し直すべきだ」と指摘する。

(2018年4月13日朝刊掲載)

年別アーカイブ