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社説・コラム

社説 再生可能エネルギー 普及遅れ 全力で挽回を

 脱原発の国際潮流に向け一歩踏み出したものの、これでは中途半端と言わざるを得ない。

 2050年を見据えた長期エネルギー政策を話し合う有識者会議で、経済産業省が報告書をまとめた。再生可能エネルギーについて「主力電源化」を目指すと明記したのは理解できる。

 気になるのは、原発の今後が曖昧な点だ。「可能な限り依存度を低減する」という現在の政府方針を維持するとした。政府はこれまで、経済界の要望などを理由に再稼働を積極的に進めてきた。今回、発電割合の数値目標提示を見送ったことからして、どこまで真剣に依存度を下げるつもりか見えてこない。

 いま発電の主力の「火力」は地球温暖化につながる二酸化炭素を排出する。温暖化防止に関する「パリ協定」で、温室効果ガスを50年に8割削減する目標を国が掲げており、いつまでも火力に頼ってはいられない。

 原発は万一の際、住民や地域に深刻な影響を及ぼす。東京電力福島第1原発事故で明らかになった。国民の不安も根強い。

 コスト面などで課題はあるが、再生エネルギーを主軸とするのは理にかなっていよう。

 ただ再生エネルギーへの移行は、国の原発へのこだわりで欧米より大幅に遅れたのは間違いない。発電量に占める比率は30%を超すイタリアやスペイン、ドイツ、25%を超す英国などに比べ、日本は15%程度にとどまる。30年時点で22~24%とした現行の目標も低過ぎないか。

 普及に限った話ではない。技術開発でも、日本企業の出遅れが懸念されている。政策が後手に回り、世界の潮流に乗り遅れてしまった責任は政府にある。

 その反省がないまま、今回も原発に執着している。確かに新増設の必要性には触れていない。中国電力が山口県上関町に計画している上関原発の工事は当面再開できなくなった。

 それでも温暖化対策を進める「選択肢」と位置付け、活用の余地を残した。再生エネルギーの重要性は認めても、原発は死守しようと考えているようだ。

 直面する課題にきちんと目を向けているのだろうか。福島の事故で何重もの安全対策が求められ、建設費は以前の2~3倍に膨らんだ。使用済み核燃料の最終処分場をどうするか、解決策は見えない。福島の事故処理費を含めなくても、かつては安いエネルギーと宣伝された状況とは程遠くなっている。

 遅れを取り戻すため全力を尽くすべき再生エネルギーにもハードルは多い。何より発電単価が高い。なぜ欧州の倍なのか、どうすれば下げられるか、分析を踏まえた対策が求められる。

 固定価格買い取り制度による再生エネルギー業者への手厚い補助が背景にあるのだろうか。早期自立するよう後押しが不可欠だ。立地地域の景観や住環境への配慮も忘れてはならない。

 技術面でも努力が必要だ。発電した電気を蓄電池や、水素に変換して貯蔵できれば天候に左右されがちな欠点を補える。世界水準に追いつくには政策による支援も欠かせないはずだ。

 国は今夏、50年までの中長期目標を中心にした新たなエネルギー基本計画を閣議決定する。原発や再生エネルギーをどうするか、暮らしに直結し、経済にも関わるだけに国民を巻き込みじっくり議論すべきである。

(2018年4月13日朝刊掲載)

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