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[イワクニ 地域と米軍基地] 平均起訴率17%止まり 米軍関係者の国内一般刑法犯

地位協定影響か

 2016年までの10年間で国内で発生した米軍関係者による一般刑法犯(自動車による過失致死傷を除く)の平均起訴率は17・5%だったことが、中国新聞の調べで分かった。同じ期間の日本人を含めた全国の平均起訴率(41・2%)の半分以下にとどまる。起訴率の差から、軍人や軍属、その家族に刑事訴訟面で「特権的」と指摘される日米地位協定の影響がうかがえる。(久保田剛)

 起訴率は、中国新聞が法務省に情報公開請求して得た「合衆国軍隊構成員等犯罪事件人員調」と、同省の「犯罪白書」から算出した。

 罪名別でみると、07~16年の「女性暴行罪」では、米軍関係者の起訴率は3・0%。全国平均の45・0%を大きく下回った。「強制わいせつ罪」は米軍関係者14・3%に対し、全国50・7%。「強盗罪」も米軍関係者は30・0%で、全国の58・9%より低水準だった。

 地位協定では、米軍人や軍属の犯罪に対する優先的な裁判権は、公務中であれば米国に、公務外であれば日本にあるとする。日米両政府は凶悪事件を契機に運用を改善してきたが、協定自体は1960年の発効後、一度も改定されていない。協定が日本側の十分な捜査を阻む一因となっている。

 さらに、53年の日米行政協定(地位協定の前身)の改定交渉で、両政府が「重要な事件以外、日本側が裁判権を放棄する」との「密約」を結んでいたことが2011年、外交文書で判明した。両政府は、その合意に効力はないとするが、米軍関係者の起訴率の低さに今も影響しているとの指摘がある。

 地位協定に詳しい法政大の明田川融教授(政治学)は「米軍関係者の犯罪を抑止し、国民の安全や国益を守るため、協定自体を見直す必要がある」と指摘する。

日米地位協定
 日米安全保障条約に基づき、1960年に発効した政府間協定。在日米軍や軍属の地位や使用する施設・区域などを定めている。米軍人や軍属が起こした公務中の事件事故に関し、米側に裁判権があると規定。公務外でも米側が先に容疑者を拘束した場合、身柄は原則として起訴まで日本側に引き渡さない。1995年の沖縄県での少女暴行事件を機に日米が運用改善で合意。凶悪犯罪について起訴前の身柄の引き渡しに米側が「好意的考慮を払う」としたが、その後も不平等との指摘は根強い。

(2018年4月16日朝刊掲載)

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