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シリア攻撃 平和的解決望む声 ヒロシマ「話し合いを」

 化学兵器を使用したとして、米英仏の3カ国がシリアの化学兵器関連施設をミサイル攻撃した14日、被爆地広島では介入を疑問視する意見や、紛争の平和的解決を求める声が上がった。

 広島大大学院総合科学研究科の吉村慎太郎教授(62)=中東現代政治史=は「被害を抑えるような事前の通告もなく、より攻撃的だ」と批判。「英仏とシリアを攻撃することで外交的な成果を米国内にアピールし、低下する支持率の巻き返しを図っているように見える」と分析した。

 「攻撃で良い方向に進むのか。難民が故郷に帰れる日が遠のいてしまう」と、ひろしま国際センターの森谷香純さん(27)=東広島市。2015年から1年間、国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊員としてシリア隣国ヨルダンの難民キャンプで活動した。現地で出会った多くのシリア出身者の今後を気遣う。

 広島県内で暮らすシリア出身者の男性(36)は10年に来日し、内戦が長引いて帰国できずにいる。「アサド政権を終わらせるため、やむを得ない面もある。ただ、軍の関連施設への攻撃ならともかく、これ以上の戦火の拡大が心配だ」と気をもむ。

 旧日本陸軍が毒ガスを製造した大久野島(竹原市)の関係者も複雑な心境だ。被害者の証言継承に取り組む市民団体「毒ガス島歴史研究所」の山内正之事務局長(73)は「化学兵器が本当に使われたのなら、毒ガス被害者の思いが無視されたということだ」。平和記念公園(広島市中区)を訪れた出雲市の会社員西條淳さん(23)も「話し合いなどで打開できないのか」と、平和的な解決策を期待する。

 NPO法人ANT―Hiroshima(中区)の渡部朋子理事長(64)は、化学兵器使用を否定するロシアと米英仏の対立が続く中、国際情勢が緊張化する可能性を指摘。「各国が軍事力を強化し、力で利益を守る方向に動いてしまう」と語る。

(2018年4月15日朝刊掲載)

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