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戦争の記憶 遺児の思い 広島市遺族会が記念誌 会員高齢化 作成前倒し

 広島市遺族会は、会員の遺児による戦争の体験談や活動内容をまとめた記念誌「隆想Ⅱ~戦没者遺児の73年」を作成した。戦後50年をきっかけに1996年に出して以来22年ぶり。次は80年の節目という案もあったが、会員の高齢化と減少を受けて前倒しした。(山田英和)

 A4判290ページで350部を発行。遺児の体験手記や慰霊友好親善事業による海外訪問記、慰霊碑の写真集などで構成する。

 「年を取って記憶が薄れたり、亡くなったりする会員が増えている。もう待たれん」。山田義春会長(80)=安佐北区=は理由を説明する。現在約800人の会員は、この5年で500人近く減った。

 父母との思い出や貧しい生活に耐え抜いた半生、ようやくつかんだ平和への思い―。遺児の手記は49人から協力を得て、2年前から集めた。

 地域支部の世話ができる人も減り、組織の維持が困難になりつつある。「書き残す気力が薄れていく人もいて、執筆者の確保に苦労した」と語る。

 父を中国での戦闘で失った山田会長。記念誌は市立中央図書館と全8区の図書館に寄贈し一息ついたが、「作成は今回が最後になるのでは」という懸念が消えない。「戦争体験を語り継ぐのは使命。体験談を通じて戦争のむなしさや悲惨さ、平和への祈りが後世に伝わってほしい」と願う。

(2018年4月17日朝刊掲載)

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