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基地周辺 騒音を懸念 岩国拠点の訓練 市長は「影響注視」

 これまで米軍厚木基地(神奈川県大和、綾瀬市)を拠点に関東地方の房総沖で行われてきた米空母艦載機の着艦資格取得訓練(CQ)。同基地周辺の騒音問題の要因の一つだった訓練は5月以降、艦載機の移転とともに、岩国基地(岩国市)を拠点に九州沖へと場所を移す。国が地元にCQ実施を通知した18日、新たな訓練に直面する基地周辺の住民から生活への影響に不安を訴える声が相次いだ。

 「1時間あたり30機以上が離陸することもある。真夜中にもさみだれ式に飛ぶ。住民にとってはたまったものではない」。基地監視団体リムピース共同代表で、厚木基地の艦載機運用を調べてきた金子豊貴男・相模原市議(68)は、同基地周辺の状況を振り返った。

 訓練期間中、米軍機が午後11時~翌午前2時ごろに離陸し、2~3時間後に厚木基地へ戻るケースもあったという。「滑走路を沖合移設した岩国でも夜間の騒音がひどくなるだろう。市民はこれまでにない体験をすることになる」

 実際、厚木基地周辺の騒音はどうだったのか。神奈川県基地対策課によると、昨年5月20~23日、運用時間外の午後10時から午前0時台にかけて、70デシベル以上の騒音を基地北側で計38回、同南側で計24回測定した。70デシベルは新幹線車内に相当する。同基地の滑走路の運用時間は午前6時~午後10時。

 当時は硫黄島(東京)での陸上空母離着陸訓練(FCLP)の直後。米軍はCQの日程を明らかにしていないが、騒音回数などから、この4日間を中心に実施された可能性がある。リムピースの集計では4日間で大和、綾瀬両市など基地周辺9市と神奈川県に計846件の苦情が寄せられた。

 18日、九州沖でのCQ実施について中国四国防衛局の赤瀬正洋局長から説明を受けた岩国市の福田良彦市長は「地域にどんな影響があるか注視したい。大きな影響があるようなら必要な対策を講じるよう国や米側に言うべきことを言う」と強調した。一方、「CQそのものを認めないとは考えていない」と述べた。

 昨年8月から始まった空母艦載機の岩国移転。主力のジェット戦闘機部隊が11、12月に移って以降、岩国基地周辺での騒音測定回数は増加している。CQの実施で騒音が悪化したり、夜間飛行が繰り返されたりする可能性が高まることに、市民からは懸念や反発の声が上がる。

 岩国市川下町の竹上繁さん(68)は「最近は昼も夜もうるさい日が多い。さらに深夜や早朝に騒音が増えるのは嫌だ」と話す。基地に隣接する川下地区連合自治会の松本哲郎会長(75)は「FCLPも、なし崩し的に岩国で実施されないだろうか。最低でも岩国日米協議会で確認した滑走路の運用時間を守ってほしい」と注文した。(馬上稔子、藤田智、坂本顕)

住民「静かな夜守って」

 九州沖での着艦資格取得訓練(CQ)の実施など、厚木基地から移転した空母艦載機部隊の運用が本格化する岩国市の米軍岩国基地。市周辺の自治体や住民からも、騒音悪化を懸念する声が上がった。

 岩国基地から北東約6キロに浮かぶ大竹市の離島、阿多田島。国設置の騒音測定器が今年1~3月に記録した騒音は870回。昨年同期の2・7倍に増えた。

 「最近は夜がうるさい」と阿多田島漁協の川原秀正組合長(70)。CQ後の機体が岩国基地に戻る時間は、深夜や未明になる恐れもある。川原組合長は「漁業の島で住民は朝も夜も早い。静かな夜を守ってほしい」と願った。島特産のイリコ漁は6月解禁で、CQの時期と重なる可能性があることも不安視した。

 「夜中に飛ばないようお願いする」。基地の南約20キロの山口県周防大島町の椎木巧町長は、説明に訪れた中国四国防衛局職員に訴えた。島周辺は、艦載機が基地と九州沖とを行き来するルート直下になる恐れがある。「事故がないよう安全に十分配慮を」と求めた。

 廿日市市の真野勝弘市長も「市民が騒音にさらされる時間が長くなる。国は不安を軽減する措置を速やかに講じてほしい」とコメント。広島県国際課の山本耕史課長は「騒音被害が改善されてない中での新たな訓練。危険な訓練の中止や騒音対策を引き続き求めていく」と話した。

(2018年4月19日朝刊掲載)

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