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社説・コラム

『記者縦横』 米軍機運用 住民目線を

■報道部 久保田剛

 滑走路から飛び立つジェット戦闘機のエンジン音が腹に響く。米軍岩国基地(岩国市)そばの川土手に立つと、地域と基地との距離の近さに驚く。その間を隔てる「フェンス」はしかし、高く、強固だ。シリーズ「イワクニ 地域と米軍基地」の取材でも、見えない壁にぶち当たる。

 その要因の一つが日米地位協定だ。在日米軍人や家族の法的地位などを定める。基地の「排他的管理権」を米軍に認め、日本政府や自治体は事実上、米軍の行動に介入できない。

 岩国でもそうだ。基地と地元、国でつくる協議会は正月三が日や盆期間中は訓練や飛行をしないなど、米軍機の運用ルールを確認している。しかし、その約束が守られないケースがある。原因をたどれば、協定に行き着く。

 岩国基地は3月、空母艦載機約60機の移転が完了した。今後、艦載機のパイロットが着艦資格を得る訓練も始まる。深夜や未明に米軍機が飛び、住民負担が増す可能性は高い。

 協定は1960年の発効以来、一度も見直されていない。イタリアやドイツは戦後に改定を重ね、米軍機への規制を強化した。日本では、国民の機運がさらに高まらなければ改定は難しいというのが現実だろう。

 だが、岩国が極東最大級の基地になった影響は地域に出始めている。ならば今の運用ルールを、より住民の立場に寄り添う内容へと見直すのが筋ではないか。基地のそばでごう音を聞くたび、強く思う。

(2018年4月20日朝刊掲載)

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