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被爆者、非核化評価 具体的な行動 注目 「宣言に確固たる意思」

 北朝鮮の非核化が最大の焦点となった27日の南北首脳会談は、「核のない朝鮮半島の実現」を共同目標とすることで合意した。広島県内の被爆者団体や有識者たちからは、互いに平和構築を目指す姿勢に評価の声が上がった。ただ、北朝鮮は非核化に向けた具体的な道筋には触れず、6月上旬までに予定される米朝首脳会談が鍵との見方もある。(野田華奈子、江川裕介、水川恭輔)

 広島県朝鮮人被爆者協議会の金鎮湖(キム・ジノ)理事長(72)は、両首脳が軍事境界線を越えて握手する様子をテレビで見ながら涙が込み上げてきたという。「いつ戦争が起きてもおかしくない状況から天国と地獄の差。本当に喜ばしい。被爆者に勇気を与えた」

 共同宣言には、国際社会が求める「完全な非核化」という文言が盛り込まれた。「宣言から確固たる意思が感じられた。朝鮮半島の平和と繁栄につながれば」と望んだ。

 韓国の原爆被害者を救援する市民の会広島支部の豊永恵三郎世話人(82)は「日本政府も拉致問題解決や被爆者支援に向け、さまざまな形で北朝鮮と交流を図るべきだ」と求めた。

 広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(76)は「核兵器廃絶へ一つステップを踏んだ」と歓迎する一方、「北朝鮮が核兵器をゼロにできるかは米国次第」と、米朝首脳会談に期待をつなぐ。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(73)も「核兵器廃絶への具体的な言及がなかったのは米朝首脳会談を控えているからでは」と推測した。

 韓国統一省の専門官を務め、北朝鮮問題に詳しい広島市立大広島平和研究所の孫賢鎮(ソン・ヒョンジン)准教授(46)は、朝鮮戦争の休戦協定を平和協定へ転換する方針が入った点に着目。北朝鮮の核開発は、平和協定によって現体制の存続の保証を得る交渉に米国を引き込む手段とみられてきたからだ。

 それだけに、「今後米国が平和協定締結に向けた交渉に応じることで、同時に北朝鮮から非核化の具体的な行動を引き出せるかが重要」と指摘。米朝首脳会談で、核開発施設の廃棄などの措置が合意文書で示されるかどうかに注目している。

(2018年4月28日朝刊掲載)

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