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平和発信 ここから ドームに響く 鎮魂の音色 オカリナ奏者の岡谷さん

 2日目を迎えた2018ひろしまフラワーフェスティバル(FF)。4日は広島市中区の平和大通り一帯に設けられたステージやブースで、音楽や折り鶴作りなどを通し、平和の大切さを確かめ合う催しが相次いだ。

 原爆ドームに臨むアイリスステージでは、「志音(しおん)」の名で活動するオカリナ奏者、岡谷豊子さん(安芸高田市)が、原爆資料館収蔵の遺品「伸ちゃんの三輪車」へ思いを寄せる新曲を披露した。平和をテーマに作曲したのは初めて。出場10回目となるFFを機に「広島の演奏家として発信すべきメッセージがある」。そう決意した。

 焼け焦げ、朽ちた三輪車。持ち主は3歳で亡くなった鉄谷伸一ちゃんだ。乗って遊んでいる時に被爆したという。火葬をためらった父親が、遺体と共に埋葬していた。今は資料館で展示されている。

 「あの日」がなければ、得意顔でペダルをこいでは母を呼んでいただろう。「おかーあさん、おかーあさん」。冒頭で繰り返されるフレーズは幼子が母を呼ぶ声を思わせる。岡谷さんは潤んだ目で空を仰ぎ、柔らかな音色を響かせた。涙をこぼす聴衆もいた。

 被爆2世。ただ、「平和」と真正面から向き合うのは今回が初めてだ。2年前、数十年ぶりに訪ねた資料館で見た三輪車に心を揺さぶられた。「かわいい盛りだっただろうに…」。それが今回の新曲「故郷へ」の創作につながった。

 岡谷さんは来場者に呼び掛けた。「三輪車を見に行って。伸ちゃんのことを、一緒に思ってほしい」(奥田美奈子)

(2018年5月5日朝刊掲載)

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