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米臨界前核実験 「被爆地の願い裏切った」 怒りや落胆広がる

 米国が昨年2月に続く臨界前核実験をしていたことが7日、判明した。「核なき世界」を掲げたオバマ大統領の再選からわずか1カ月。被爆地広島に、怒りと落胆が広がった。

 この日夜、広島市中区の原爆ドーム前であった世界遺産登録16周年の記念行事は、米への抗議一色になった。

 「無言のドームも核兵器廃絶を訴えている」と広島県被団協の坪井直理事長(87)。約70人の参加者は「平和への願いを裏切る行為だ」との声を上げた。オバマ大統領宛ての抗議文を採択し、東京の米国大使館へ送付することを決めた。

 もう一つの県被団協(金子一士理事長)も同日、県原水協と連名で米大使館へ抗議文をファクスした。吉岡幸雄副理事長(83)は「核兵器廃絶をうたうオバマ大統領自身が機運を打ち消している。期待を裏切られてばかりだ」と語気を強めた。

 核兵器廃絶をめざすヒロシマの会の森滝春子共同代表(73)は「核抑止力に根ざす米の安全保障政策は変わらない。日本政府も『核の傘』への依存を見直すべきだ」と指摘した。

 日本被団協と日本原水協はオバマ大統領宛ての抗議文を米国大使館に送った。被団協は「核抑止力による威嚇の維持を誇示するもので、被爆者は容認できない」、原水協は「他国に核兵器放棄を迫り、自ら核実験を継続する姿勢は、世論の納得を得られない」と、いかなる核実験も行わないよう求めた。(田中美千子、武河隆司)

米臨界前核実験 平和監視時計表示リセット 原爆資料館 「102」から「2」

 米国が臨界前核実験を実施したのを受け、原爆資料館(広島市中区)は7日、直近の核実験からの日数を示す「地球平和監視時計」の表示を「102」から「2」にリセットした。

 前田耕一郎館長がリモコンを操作し、資料館東館1階にある時計のデジタル表示を切り替えた。前田館長は「核実験は核兵器を持ち続ける意思の表れ。日本全体で核廃絶を訴えなければならない」と話した。

 リセットは、米国が核兵器の性能を調べる新たなタイプの核実験をしたことが判明した9月24日以来。時計が設置された2001年8月から17回目になる。(山本乃輔)

(2012年12月8日朝刊掲載)

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