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被爆者試料の活用検討 放影研 方針策定へ諮問委初会合

 放射線影響研究所(放影研、広島市南区)は、保存している被爆者の血液などの試料の活用方針を作る。国内外のほかの機関との共同研究の在り方や、試料を提供した被爆者の同意をどう得るかが柱。方針作りに向け、被爆者たちから意見を聴く外部諮問委員会の初会合が11日、広島大医学部(南区)であった。

 放影研は被爆者の健康影響を調べるため、約2万4千人を対象に隔年の健診を実施し、血清約72万本や尿約19万本などを保管している。ただ、本人の同意を得ているのは放影研での利用。方針作りは、がんなどの発症や予防を巡る遺伝子レベルの研究を、ほかの機関の最新技術も交えて進めることが視野にある。

 初会合では、広島県被団協の坪井直理事長たち委員7人が、最新研究への活用の是非などを非公開で議論した。終了後に記者会見した副委員長の小林正夫・広島大大学院教授(小児科学)は「おおむね、貴重な試料を有効に使ってもらいたいとの意見だった」と説明。一方で「個人情報や遺伝子レベルの研究の倫理的な問題もある」と述べ、特に共同研究への活用の同意を課題に挙げた。

 放影研は、ほかの機関も絡む研究について、健診時に個別に具体的な研究内容を説明し、同意を得る手順を想定。本年度内に次回を開き、議論を詰める。放影研の丹羽太貫理事長は「世界的に類例がない貴重な試料。被爆者や市民の見方を踏まえて利用したい」としている。(水川恭輔)

(2018年5月12日朝刊掲載)

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