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2012政治決戦 被爆地の核軍縮論低調 公約・具体策見えず

 米国の臨界前核実験が分かった7日、立候補者たちは被爆地で、抗議の声を上げた。ただ、オバマ米大統領が「核兵器のない世界」を掲げ、核兵器廃絶への機運が高まった前回衆院選に比べ、各党の軍縮をめぐる論戦は低調だ。公約も目立たず、見解を示さない第三極さえある。被爆国の政党として、その姿勢が問われる。(衆院選取材班)

 「ノーモア・フクシマ、ノーモア・ヒロシマの哲学を発信しよう」。7日、日本未来の党の幹部が広島市を遊説。中区の原爆ドーム前で黙とう後、「卒原発」を訴えた。同行した広島1区の同党比例前職(44)は中国新聞の取材に核実験を「時代遅れ」と一蹴した。

 他候補も一様に抗議を口にする。1区では共産党新人(46)は「世界の世論への挑戦だ」、民主党新人(49)は「どの国も核兵器を持つべきでない」。

 広島2区の日本維新の会新人(43)は「慎重な行動を」、同3区の自民党比例前職(49)も「核兵器のない世界へ一歩でも近づくよう努力する」。声は核兵器廃絶で一致する。

 ただ、核兵器をどうなくすか、その道筋を訴える姿は目立たない。同じ核問題でも、「脱原発」が大きな争点であるのに比べ、ギャップは大きい。

 「原発の話は出るが、原爆は出なくなった」。核実験への抗議でこの日、ドーム前に立った日本被団協の坪井直代表委員(87)はそうこぼした。

 各党の公約はどうか。

 民主党は核兵器廃絶に向け、「国際社会で主導的な役割を担う」と意欲的に記す。

 2009年の衆院選では、北東アジアの非核化や包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効―を掲げた。民主党政権では、野党時代から北東アジアの非核化に取り組んできた議員が条約骨子案をまとめるなど、成果もあった。それだけに今回の公約は具体論に乏しい。

 自民党は昨夏、核兵器を積んだ船の寄港を認める「非核2・5原則」とする報告書をまとめた。公約では「核軍縮分野の現実的かつ具体的な取り組み」の推進をうたう一方、安全保障を理由に「核抑止政策の基本方針の確立」も明記している。

 石原慎太郎代表が個人的見解として「核兵器に関するシミュレーションぐらいしたらいい」と発言した日本維新の会は、公約で核兵器に言及していない。日本未来の党の公約にも記載がない。

 他方、共産党や社民党などは、核兵器禁止条約の交渉入りや非核三原則の法制化を列挙。ただ、実現に向け、現実的な道筋と実行力が問われる。

 「核兵器の問題が差し迫った課題と思われていない」と広島市立大広島平和研究所の水本和実副所長(核軍縮)。「市民が政党に質問状を出すなど、具体的な行動が必要だ」と指摘する。

<核軍縮に関する主な政党の公約>

●民主  「核兵器のない世界」の実現へ積極的に取り組み、国際社会で主導的な役割を担う
●自民  核軍縮分野での現実的かつ具体的な取り組みを推進。「核抑止政策」について根本的な議論を開始し基本
       方針を確立
●未来  記述なし
●公明  核兵器禁止条約と、「永遠に核兵器を保有しない」との政府宣言を主張。2015年の核廃絶サミットの被爆
       地開催を提案。北東アジア非核地帯を目指す
●維新  記述なし
●共産  米国の「核の傘」から抜け出し、「核兵器のない世界」へのイニシアチブを発揮。核兵器禁止条約の国際交
       渉開始を呼び掛ける
●みんな 核軍縮や核不拡散に主導的役割を果たす。広島、長崎で世界軍縮会議を開催
●社民  北東アジア非核地帯、非核三原則の法制化、核兵器国による核の先制不使用宣言の条約化を目指す

(2012年12月8日朝刊掲載)

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