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毒ガスの歴史語り継ぐドキュメンタリー「伝言」が完成

■記者 白石誠

 日本軍の毒ガス製造施設があった大久野島(竹原市忠海町)のドキュメンタリー映像「伝言」を、元神戸新聞記者の加国徹さん(41)=岩国市出身=が完成させた。製造に携わったり、歴史を語り継いだりする人の思いを半年かけて記録。「歴史を見つめることで、同じ間違いを繰り返さないように訴えたい」と誓う。

 映像は33分。毒ガス島歴史研究所の山内静代代表(60)=竹原市東野町=のメッセージや、夫の正之さん(64)が修学旅行生にガイドする様子などを撮影。製造に従事し後遺症に悩まされる高齢者の証言とともに構成する。

 「毒ガス製造が日常化する恐ろしさ、戦争を知らない世代は何ができるかを問い掛けた」という。島の出来事を表した静代さんのモザイク画に触発されタイトルを同じ「伝言」に。収録テープは30時間分に上った。

 島を初めて訪れたのは1997年。「隣県で育ちながら、島のことを知らなかった」ショックを原点に、いつかは取り上げたいと心に秘めていた。

 12年半の記者生活の後、3年前に早大川口芸術学校へ進学。デジタル映像技術を学び春から番組制作会社に入る。作品は卒業制作で、指導した元NHKディレクターは「骨格があり、知られざる戦争の悲劇に圧倒された」と高く評価する。

 加国さんは「戦争を引き起こした『官僚システム』は今もある。作品に入らなかった証言は今後、何かの形で生かしたい」と意気込む。

(2009年1月21日朝刊掲載)

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