×

ニュース

「ひろしまハウス」資金難 カンボジアの平和交流施設 運営者「支援の機運を」

 1994年の広島アジア競技大会を機に、被爆地の市民の力でカンボジアにできた平和交流施設「ひろしまハウス」が資金難に直面している。現地の子ども支援が滞る恐れがあり、運営するNPO法人ひろしま・カンボジア市民交流会は、特別支援会員の仕組みを新設した。館長の国近京子さん(76)=広島市中区=は「盛り上がった機運を消さないために、多くの人の協力を」と呼び掛けている。(山本祐司)

 ハウスは2006年に同国の首都プノンペンに完成した。現在、貧しい子どもに無償で教育と給食を提供する役割を担う。教員5人とスタッフ1人のほか、広島出身で現地に暮らす友広壮希さん(26)がマネジャーとなって1日30人以上の子どもを世話している。

 「物をあげるだけでもなく、言葉だけでもなく、手を取り合って心を通わせることが真の交流」と国近さんは言う。毎月の経費は、ボランティアの友広さんを除いた人件費と給食の材料費、光熱費などで20万円余りかかる。これまでは日本の助成金を申請して急場をしのぎ、昨年はクラウドファンディングを募った。しかし、今年9月以降の資金が見込めないという。

 国近さんは、内戦を乗り越えて広島のアジア大会に参加したカンボジア選手団の派遣費用を募る活動を担った。復興した街に感動する選手らの姿に触れ、交流を続けようと心に決めた。拠点のハウスは完成まで10年かかったが広島発のれんが積みツアーや、建設費の半分を占めた寄付など、市民の力が実を結んだ。

 東京五輪・パラリンピックまで2年。参加国・地域と相互交流する「ホストタウン」の取り組みが、いま全国に広がる。国際大会を通じた交流を「平和の器」につなげた被爆地発の国際貢献の取り組みは今後のモデルにもなる、と国近さんは考える。今こそ運動の原点を思い返し、再評価してもらうために、これまでの活動を振り返る本の出版も計画しているという。

 特別支援会員は会費月額5千円、1万円、1万円以上の3種類。同NPO法人の正会員(年1万円)、法人会員(同3万円)、賛助会員(同3千円・6千円)も募る。事務局の平野朝彦さん☎090(2800)3564。

(2018年5月22日朝刊掲載)

年別アーカイブ