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規制委判断、敦賀直下に「活断層」 島根原発でも議論再燃

 原子力規制委員会が敦賀原発(福井県敦賀市)直下の断層を活断層の可能性が高いと判断し、地震のリスクをより厳しく審査する姿勢を打ち出した。評価が大きく揺れてきた中国電力の島根原発(松江市)近くの活断層についても、専門家から再調査を求める声が上がっている。

 「島根原発周辺の活断層も、国は危険性を過小評価してきた」。変動地形学が専門の広島大名誉教授、中田高さん(70)は強調する。

 中電は1998年、島根原発の約2・5キロ南に長さ「8キロ」の宍道断層を確認したと発表。活断層は「ない」との評価を覆した。さらに断層の長さを2004年に「10キロ」、08年に「22キロ」に見直し、その都度、国が承認をしてきた。

 中田さんは「これまでの調査は十分とは言えず、活断層の範囲がまだ広がる可能性がある。近くの断層を再調査すべきだ」と指摘する。06~11年に計5回、宍道断層を調査した東洋大社会学部の渡辺満久教授(変動地形学)は、ボーリングを中心とした中電の地質調査の方法に「重大な欠陥がある」と疑問を投げ掛ける。

 中電は「科学的知見を反映した国の耐震指針などに基づき対応済み」と説明。原発の敷地内には、破砕帯(断層)も確認されていないとする。ことし6月からは、島根原発の周辺海域の三つの活断層(総延長51・5キロ)が連動した地震を想定して安全性の再評価を進めており、現時点で「主要な施設に問題はない」という。

 規制委による活断層の現地調査は、敦賀原発など6カ所。島根原発は敷地内に断層がある可能性が低く、対象ではない。

 島根原発1、2号機の運転差し止め訴訟で、原告団代表を務める芦原康江さん(59)=松江市=は「住民の不安を打ち消すためにも、電力会社ではなく中立性が保たれた第三者による調査が必要」と訴える。(東海右佐衛門直柄、樋口浩二)

<島根原発と活断層をめぐる主な動き>
1998年8月 中電が宍道断層を確認、長さ8キロと発表
  99年4月 松江市の市民団体が松江地裁に1、2号機の運転差し止めを求め提訴
2004年4月 中電が宍道断層の長さを10キロに訂正
  06年5月 広島工業大などの共同研究チームが、中電の主張する東端より東側に活断層があると発表
  08年3月 中電が宍道断層の長さを22キロに訂正
  10年5月 松江地裁が運転差し止め訴訟を棄却。翌月、市民団体は広島高裁に控訴
  12年5月 中電が日本海上の3断層が連動した場合、想定する揺れの強さを上回る可能性があると発表

(2012年12月12日朝刊掲載)

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