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地蔵が語る原爆のむごさ 広島の40ヵ所 藤登さん画集出版へ

 広島市安芸区のアマチュア画家、藤登弘郎さん(82)が広島市内の約40カ寺に残る被爆地蔵を水彩画に描いている。年内に作品を仕上げて来春、画集にする。

 爆心地から約1・1キロ離れた中区西平塚町の興禅寺で昨年6月、爆風で首が飛ばされるなどした20体余りの地蔵に出会ったのがきっかけ。「人間によく似たお地蔵さんの姿を見て原爆のむごさを感じた」といい、絵に残すことにした。

 爆心地から約1・5キロ以内の寺を回り、首がなくなったり、顔がそげたりした地蔵を描いている。傷を負った地蔵を柔らかなタッチでスケッチし、約70枚を完成させる予定だ。

 藤登さんは呉市安浦町出身で、兄が被爆した。水彩画は銀行退職後の60歳ごろから始め、2010年に被爆建物、14年に被爆樹木、16年には原爆死没者の慰霊碑を画集にした。

 「被爆地蔵は、兄が生前語っていた被爆者の姿と重なる。70年以上が過ぎ、雨風に耐えた姿を絵にし、原爆の悲劇を伝えたい」と話している。(増田咲子)

(2018年5月28日朝刊掲載)

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