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地上イージス「萩が最適」 政務官 山口知事らに説明

 北朝鮮への弾道ミサイル防衛(BMD)の一環で導入する地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」について、防衛省の大野敬太郎政務官が1日、山口県庁で村岡嗣政知事らと面会し、萩市の陸上自衛隊むつみ演習場を最適な候補地として夏以降に現地調査する方針を説明した。同省は同日、秋田県の佐竹敬久知事にも、秋田市の陸自新屋演習場を同様に調査する方針を伝えた。

 国は昨年12月、国内2基の導入を閣議決定。萩市と秋田市の演習場を候補地に検討してきたが、具体的配備先は明らかにしてこなかった。

 山口県では、大野政務官と中国四国防衛局の赤瀬正洋局長が県庁を訪れ、村岡知事と面会。地元の藤道健二萩市長、花田憲彦阿武町長も同席した。大野政務官は、配備の必要性に「北朝鮮の弾道ミサイルへの対応」を改めて強調。夏以降に現地の地質や測量調査などに入る考えを示した。

 山口、秋田両県の演習場を最適な候補地とする理由については、日本全土を防護するため日本海側の南北に2基をバランス良く配置できる▽レーダーなどの運用で、広く平らな土地を確保できる―などを条件に全国の自衛隊施設から選定したと説明した。

 村岡知事が「北朝鮮に対話の動きがある中で配備の必要性は変わってくるのか」とただしたのに対し、大野政務官は北朝鮮の脅威が続いていることを強調した。藤道市長は「ミサイル攻撃やテロの標的になるリスクは」などと質問した。防衛省は今後、地元住民向けの説明会も予定している。(和多正憲)

イージス・アショア
 海上自衛隊のイージス艦と同様のレーダーやミサイル発射装置などから構成される地上配備型の弾道ミサイル迎撃システム。陸地のため、イージス艦と比べて常時警戒が容易で、部隊の負担も軽減できる利点がある。政府が2017年12月に国内2基の導入を閣議決定。23年度の運用開始を目指している。

【解説】なし崩し 残る疑念

 防衛省がイージス・アショア配備に向け、山口、秋田両県を最適候補地として現地調査する方針をようやく伝えた。昨年12月に国内2基の導入を閣議決定して以降も国は一貫して配備先を明言せず、国会での議論は深まらなかった。なし崩し的に配備を進めようとしていないか疑念が残る。

 国が「差し迫った新たな段階の脅威」とした北朝鮮の核・ミサイル開発の動きはこの半年で大きく変化。4月の南北首脳会談に続き12日には史上初の米朝トップ会談の調整も進む。配備を急ぐ前提が揺らぐが、菅義偉官房長官はこの日の記者会見で「速やかな導入を図ることに変わりない」との姿勢を崩していない。

 これまで小野寺五典防衛相は配備に際し「地元の理解と協力が必要」と強調してきた。だが、首長の合意を得ることだけが「地元の理解」ではない。地域住民に正確な情報を伝え、その疑問点に真摯(しんし)に答える姿勢が不可欠だ。

 朝鮮半島情勢に対話の兆しがみえる中、住民には緊張を高めかねない迎撃システムが本当に必要なのかとの声がある。ミサイルの標的となるリスクや電磁波など健康被害への懸念も指摘される。国はこうした声に真正面から向き合い「導入ありき」ではなく、時間をかけた議論と説明を続けるべきだ。(和多正憲)

(2018年6月2日朝刊掲載)

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