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復興期のヒロシマ 鮮明 家財処分中 写真8枚発見

52~54年ごろ 慰霊碑の向こうにバラック、広電軌道付け替え…

 被爆地の復興が進む1952~54年ごろ、平和記念公園周辺などで撮影されたとみられる写真8枚が、2年前に広島市内で売りに出された民家で処分寸前に見つかった。市公文書館は「構図が良く、写真が好きな人が街が生まれ変わる姿を残そうとしたことが分かる」とみている。(桑島美帆)

 縦が約6センチ、横が約4・8センチという小さな紙焼きの写真はセピア色になっている。ある民家の家財処分を頼まれた南区の工務店経営者が、家の中に残されていたのに気付いた。

 処分も含めて任されていたが「捨てるのはしのびない」と保管した。しかし、その物件の持ち主は転々としていたため写真を撮った人は分からないままだった。最近になって、近所に住む被爆者の岩田啓作さん(78)に譲ったという。

 持ち込まれた公文書館では、前館長で公文書館被爆70年史編修研究会事務局長を務める中川利国さん(61)らが分析し、復興期の貴重な写真だと確認した。

 4枚までが平和記念公園周辺で撮影され、建設中の原爆資料館や、開通間もない平和大橋などのカットがあった。原爆慰霊碑を撮った写真には向こう側に原爆ドームや当時のバラックが並び、軒先に干された洗濯物も写っている。

 広島駅近くの映画館「広島劇場」の周辺を撮った一こまも目を引く。洋画の看板や、人気歌手だった故小畑実さんの出演を告げる横断幕も見える。公文書館によると惨禍から市民が立ち上がり、暮らしに少し余裕が出て娯楽を楽しんでいた様子が伝わるという。

 さらに相生通りの道幅を拡張し、広島電鉄の路面電車の軌道の付け替えが進む八丁堀周辺の写真もある。福屋の屋上から撮影したらしく、軌道に枕木が並んでいる様子が分かる。

 8枚の写真を岩田さんは近く公文書館に寄贈する。

(2018年6月4日朝刊掲載)

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