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宇根さんの心継承の演奏会 「桂の滝」が縁 被爆ピアノ使う 

 半世紀以上にわたり原爆死没者の慰霊碑に献水を続け、2月に93歳で亡くなった宇根利枝さんをしのび、広島県呉市蒲刈町で15日、被爆ピアノコンサートが開かれる。宇根さんが同町宮盛の「桂の滝」の水を使っていた縁で、住民が企画した。(加田智之)

 被爆者でもある宇根さんは1955年、水を求めて息絶えた犠牲者を悼み、広島市内の慰霊碑への献水を始めた。85年ごろから7月末に桂の滝を訪れ、2リットルのペットボトル5本分の水を持ち帰っていた。

 同市南区の自宅から島に足を運んだ。最寄りの駐車場で車を降り、70メートルほどの山道を上った。宮盛地区の原田福造区長(76)は「80歳を超えても歩くのが速く、同行する私たちに『若いんだから速く歩きなさい』と言われた」と懐かしむ。

 といの水を両手で受けて飲み「おいしい」と喜んでいたという。原爆についてはほとんど語らなかった。原田区長は「それでも平和を望む思いは伝わってきた」。共感の輪が広がり、96年に滝近くに原爆献水碑を建てた。

 「被爆ピアノにふれる会」は県民の浜で午前10時30分から。町まちづくり協議会とNPO法人ベンチャーかまがりの主催。地元の女性や町内の小学生たちが演奏する。無料。

 協議会会長でもある原田区長は「宇根さんをしのび、平和を考えるきっかけになれば」と願う。同法人Tel0823(68)0120。

(2012年12月14日朝刊掲載)

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