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師走決戦 やまぐち’12衆院選 原発論争に思い複雑 上関抱える県内有権者

 福島第1原発の事故後、クローズアップされる原発計画の是非。終盤戦を迎えた今回衆院選の大きな争点の一つだが、上関原発建設計画を抱える山口県内の有権者は複雑な思いで各候補の訴えに耳を傾けている。長引く不況で雇用不安は募り、少子高齢化も進む。消費税増税も迫る。原発の是非だけが投票先を決める要因になりにくい現実があるからだ。(久保田剛)

 「脱原発に期待するが議員の仕事はほかにもある。原発以外の訴えも聞きたかった」。7日午後、周南市のJR徳山駅前。卒原発を訴える山口1区の日本未来の党新人の街頭演説を聞きながら、同市の無職男性(67)はため息をついた。

 男性の親類は上関原発建設予定地の近くに住んでいる。自身は原発には反対の思いが強いが、若者の雇用がしぼんでいく現状にも危機感を抱く。年金頼みの暮らしには、不安を感じる課題が数多く横たわる。候補者に拍手を送る支持者を横目に、男性はそっと立ち去った。

 その1区で議席を守ってきた自民党前職は「政党がシングルイシュー(単一争点)でいいはずがない」。外交や経済、教育の再生などを訴え、支持拡大を目指す。

 長年自民党を支持してきたという同市の主婦(45)は「このままの景気は良くない。すぐに効果が出る政策を進めてほしい」と期待する。しかし、その一方で「福島のような事故が再び起きたら、少々の景気回復なんて吹き飛んでしまう」と原発への不安も隠さない。

 建設予定地の上関町には6日、山口2区に立つ4人のうち3人が足を踏み入れた。「原発は認めないが地域振興策を講じる」「国策(の原発建設計画)に従ってきた地元の心を大事にする」…。

 民主党前職の演説を聞いた80歳代の男性は「過去の衆院選とは重みが違う。脱原発にかじを取る候補に思いを託す」。自民党新人と握手した30歳代の男性は「まずは不況からの脱却を進めてほしい。原発はすぐにはできないだろう」と話した。

 中国新聞社と共同通信社が行った県内の世論調査では、7割近くが上関原発建設計画に反対の姿勢。一方で、争点として最も関心のあるテーマは「景気や雇用」がトップで、原発問題などエネルギー政策は4位にとどまる。

 上関町の原発建設予定地の30キロ圏内に大半が入る柳井市。12日、朝立ちする候補者のそばを通り掛かった同市の主婦(38)は「原発はいつかはなくなるほうがいい。でも地域を元気にする政策も大事」と話した。前回は民主党候補に投票したというが、今回はまだ決めかねているという。

(2012年12月15日朝刊掲載)

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