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広島市西区の画家 宇佐川さん 被爆体験基に人間の闇描く 古里・廿日市で初個展

 広島市西区の画家で被爆者の宇佐川良さん(87)が、廿日市市宮内のアートギャラリーミヤウチで個展「ふるさと回顧展」を開いている。生まれ育った宮内地区で開く初の展示会で、被爆後に始めた画業をたどる59点を展示している。24日まで。

 当時、国鉄職員として宮島口駅で働いていた宇佐川さんは救援のため、広島市に入って被爆。4日間にわたり遺体の火葬を続けた。

 「地獄絵図。本当の恐ろしさを知っていたら描けるわけがない」。宇佐川さんは、被爆の惨状を直接描くのは避けつつ、脳裏に焼き付いた原爆についての作品を生み続けてきた。傘を差して歩く人々の後ろ姿を描いた油彩画は、傘に隠された「戦争を起こした人間の闇」を表現している。

 複数の角度から見える形を1枚の絵に収めるキュービズムを取り入れた絵に登場するトランプについて、「人生は占いのようなもの」と描いた意図を語る。一枚のカードがその後の運命をがらりと変えるとして、被爆地で生き残った自身の姿を重ね合わせる。

 会場には、市内の極楽寺山の蛇の池や、アトリエを置く北広島町の自然など多くの風景画も並ぶ。宇佐川さんは「つらい原爆の記憶から絵に救われた。残したい風景や記憶を基に描いた作品を古里の人たちに見てほしい」と話す。火、水曜日休館。無料。(森戸新士)

(2018年6月8日朝刊掲載)

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