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衆院選 自民圧勝 原発 再び揺れる「上関」 自民票にも懸念の声

 衆院選で自民党が圧勝し、中国電力の上関原発予定地(山口県上関町)の地元が再び揺れ始めた。民主党政権が建設を認めないとした同原発の推進を期待する声も漏れる。だが自民党候補に投票した人にも、同原発に反対する強い声がある。(久保田剛、樋口浩二)

 「元は自民党が認めた計画。今後の議論でよい方向が見えてくる」。上関町を含む衆院山口2区で当選した自民党新人の岸信夫氏を支援した、同町の原電推進議員会の右田勝会長(71)は、自民党の政権復帰で計画の再浮上に期待を高めた。

 岸氏は選挙戦で上関原発について「今の段階で結論を出すことはできない」と態度を保留。だが推進派の住民は「風向きが再び変わる」と受け止める。

 「景気対策と国益を守る外交に期待し、自民党候補を選んだ。原発の建設を支持したわけではない」。建設予定地の30キロ圏内に大半が入る柳井市の会社員男性(55)は、投票後にこう強調した。計画に反対の立場だが岸氏に票を投じた。「私のような人は多いと思う」

 中国新聞防長本社が山口2区の743人から回答を得た出口調査では、岸氏に投票したと答えた人の51%が、同原発計画を「進めるべきだと思わない」と回答した。ほぼ半数が計画反対の姿勢を示している。

 17日、上関町役場であった記者会見。柏原重海町長は原発計画の今後について「正式に国から方針が示されないと影響は分からない」と言葉を選んだ。長く揺れ続けてきた経緯を踏まえ、「一刻も早く方向性を示してほしい」と語った。だが選挙の「民意」をめぐり、今後も議論が揺れる可能性がある。

 中電の島根原発(松江市)が立地する島根県の溝口善兵衛知事は17日、「各党はいろんな表現で説明したが、どう目標を達成するのか十分に分からなかった」と原発に関する論戦を振り返った。今後の具体策を注視する考えを示す。

 島根原発増設反対運動の代表、芦原康江さん(59)=松江市=は「原発政策で自民党が勝ったわけではない。脱原発の世論は根強く、民意をはき違えないでほしい」と力を込める。

 選挙結果について中電は「コメントする立場にない」と静観の姿勢を示している。

(2012年12月18日朝刊掲載)

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