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核なき世界実現を 希望を感じた/道筋示して 広島の被爆者団体

 トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が史上初の米朝首脳会談を行った12日、広島県内の被爆者団体などは「非核化への大きな一歩」と評価した。北東アジアの平和構築に向けた歴史的な転機とするために、着実な履行への具体的な道筋や時期を示すよう求める声もあった。

 金氏は共同声明で、「朝鮮半島の完全非核化」を約束。トランプ氏はそのプロセスを迅速に始めると強調した。「新しい朝米関係の突破口を開いた素晴らしい一日。平和体制構築への希望を感じた」。広島県朝鮮人被爆者協議会の金鎮湖(キム・ジノ)理事長(72)は、テレビで見た両氏の振る舞いに信頼醸成を感じ取ったという。「朝鮮半島で非核化が進めば、アジアや全世界の核兵器廃絶へ大きなインパクトになる」と今後の交渉に期待を寄せた。

 在日本大韓民国民団(民団)県地方本部韓国原爆被害者対策特別委員会の朴南珠(パク・ナムジュ)委員長(85)は「よくここまでこぎ着けたと思う。朝鮮半島の平和条約はすぐには難しいかもしれないが、もともと同じ民族で言葉も文化も一緒。今回の会談を機に平和な方向に進んでほしい」と歓迎。韓国の原爆被害者を救援する市民の会広島支部の豊永恵三郎世話人(82)も「両国のトップ同士の署名は重みがある。南北の交流につながれば」と喜んだ。

 県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(76)は「北朝鮮が非核化を誓ったのは大きい」と評価する一方、国際的な核軍縮の進展が欠かせないと指摘。「米ロなども自国の核兵器削減に向け、何らかの意思表示をするべきだ」と注文した。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(73)は「これまで続けてきた核兵器廃絶運動や市民社会の動きも米朝会談に影響を与えたのではないか。非核化実現はこれからの運動次第」と感慨深い様子。「今後の交渉で時期やプロセスを明示してほしい。日本政府も米国に追従するだけでなく、北朝鮮の非核化に積極的に関わってほしい」と求めた。

 湯崎英彦広島県知事は「北朝鮮の核・ミサイルの完全で検証可能かつ不可逆的な方法による廃棄につながるかどうか、見定める必要がある。困難を乗り越えて、非核化のプロセスが着実に進むことを強く期待する」とのコメントを発表した。

(2018年6月13日朝刊掲載)

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