×

社説・コラム

社説 福島第2原発廃炉 東電の決断は遅過ぎる

 地元が望む廃炉に進むのは当然だろう。しかしなぜこれほど時間がかかったのか。遅過ぎる決断と言わざるを得ない。

 東京電力ホールディングスの小早川智明社長が、福島第2原発の全4基の廃炉を検討すると福島県の内堀雅雄知事に伝えた。福島第1の事故から7年余り、この時期の決断は先日の新潟県知事選で、各地で原発再稼働に前向きな政権与党の推す候補が勝ったことも影響していよう。まだ先だが、東電にとっては新潟にある柏崎刈羽原発の再稼働が視野に入ったからだ。

 ただ廃炉作業について具体的説明はなかった。社長は「検討はこれから」と述べるにとどまった。本気度が感じられない。

 福島第2の4基は、事故を起こした福島第1の南約12キロにある。東日本大震災では、炉心溶融(メルトダウン)は免れた。

 その廃炉は「福島県民の総意」である。県は20回以上も東電に要求してきた。県議会や、県内の全市町村議会も決議や意見書で廃炉を求めていた。こうした状況で、再稼働を地元が認めることは考えられない。

 それでも東電は「国のエネルギー政策などを総合的に判断する」などと廃炉の決断を先送りしてきた。今回やっと地元の声に応えた格好だ。「もっと早く判断できたのでは」との声が出るのも無理はあるまい。

 なぜこのタイミングだったのか。秋にある知事選で、再選を目指すとみられる内堀氏との関係をより強くする狙いもあったのだろう。今回の決断で内堀氏が「県内の原発は全て廃炉」という公約を守ったことになれば、東電としては貸しをつくったことになるからだ。

 福島第1の汚染水問題も絡んでいる。放射性のトリチウムが微量含まれるが、取り出すのは難しい。濃度を薄めた上で海に流す案を検討しているが、漁業関係者らの反発は必至だ。福島第2を廃炉にする代わりに汚染水では県から譲歩を引き出そうと考えているとの見方もある。

 廃炉の会計制度を国が見直し、費用を単年ではなく数年に分けて負担できるようになったことも決断を後押しした。

 今後最大の課題は廃炉をどう進めるか、である。安全を確保しながら確実に作業する責任は電力会社にある。ただ福島第2を含め廃炉の対象は全国22基に上り、「大量廃炉」時代の到来と言える。壁となっている放射性廃棄物をどう処分するか、解決には国の支援が不可欠だ。

 福島第2の廃炉には2800億円ほどかかる。東電が積み立ててきた約2千億円とは800億円もの開きがある。当初見積額で済むか不安も残る。最終処分まで考えないまま突っ走ってきた原発政策のつけが回ってきたと言えるのではないか。

 というのも商業用原発では国内初となる日本原子力発電の東海原発(茨城県)の廃炉が難航しているからだ。2017年度までに終える計画だったが、廃棄物の処分方法が決まらず2度延期となり、今は25年度完了を目指している。費用は約885億円と見積もるが、長期化すれば膨らむのは避けられない。

 メルトダウンした福島第1の廃炉も先行きが見通せない。第2が加わり、多額の費用や作業員確保なども一層求められる。東電は早急に具体的な手順や日程をまとめねばならない。

(2018年6月16日朝刊掲載)

年別アーカイブ