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[ヒロシマは問う どうみる米朝首脳会談] 民団広島県本部韓国原爆被害者対策特別委員長 朴南珠氏

世界中の核なくす契機に

 平和に向かうのは良いこと。北朝鮮の核兵器をなくすことは一筋縄にはいかないと思うが、期待して今後の交渉を見守りたい。北朝鮮だけでなく、世界中の核兵器をなくすきっかけにしてほしい。

 私は高等女学校1年だった1945年8月6日、爆心地から1・9キロの福島町(現広島市西区)で乗っていた路面電車の中で被爆した。近くの川土手から見渡した広島市内の惨状が忘れられない。広島の街が一瞬で消えてなくなっていた。「熱い熱い、助けてくれ」とうめき声を上げながら、血を流した人がどんどん避難してきた。その言葉が途切れると、か細い声で「水…」と言って亡くなった。

 核兵器の怖さは私たち被爆者が一番分かっている。北朝鮮はなぜ核兵器を持とうとするのか。本当に使うことができると思っているのか、と憤りを覚える。

 同じことは米国、ロシア、中国などの核兵器保有国や「核の傘」にいる日本にも言える。北朝鮮に非核化を求めるなら、米国を含めた全世界が核をなくす動きを見せるべきだ。

 広島の被爆者7団体などでつくる「ヒバクシャ国際署名広島県推進連絡会」の一員として、核保有国や日本政府などに核兵器禁止条約への加盟を迫る署名活動をしている。子どもたちに被爆体験を話す活動もしている。私たちは地道な活動を続けていきたい。

 平和記念公園(中区)には韓国人原爆犠牲者慰霊碑があるが、この中に北朝鮮側の犠牲者はまつられていない。2001年には南北統一の慰霊碑について「早期実現のために努力する」とした文書を広島市と在日本大韓民国民団(民団)、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)で交わしたが、北朝鮮の核実験強行もあり、議論はストップした。

 同じ民族でも民団と総連の人同士の交流はほとんどなく、近所に住んでいてもあいさつさえしない時代が長かった。南北首脳会談や米朝首脳会談を機に朝鮮半島の融和ムードが高まっている。心の壁を取り払うのは簡単ではないが、朝鮮半島出身者が誰でもお参りできる「統一碑」の議論を再開するきっかけになるかもしれない。(永山啓一)

パク・ナムジュ
 1932年、広島市生まれ。両親は韓国・慶尚南道から来日。2003年に被爆証言活動を始める。15年3月から現職。

(2018年6月18日朝刊掲載)

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