×

連載・特集

イワクニ 地域と米軍基地 移転の先 <7> 「米側の都合」情報混乱

地域の視点で関係模索を

 「周辺の環境が悪化し、十分な安全対策が講じられない場合、基地機能の変更は容認できない」。13日、岩国市議会一般質問。福田良彦市長は、米軍岩国基地に対する姿勢を強調した。「現実的かつ前向きに、基地を市政の発展に生かしていく」

 福田市長が、岩国基地への空母艦載機約60機の移転容認を表明してから23日で1年。移転は昨年8月から段階的に始まり、3月末に完了。所属機は既存の海兵隊機を含めて約120機に倍増し、岩国は極東最大級の航空基地へと変貌を遂げた。

 しかし、基地の変化は終わってはいない。米軍は現在の配備機体を、最新鋭ステルス戦闘機F35に転換する計画を進めようとしている。

 海兵隊は1月に公表した「2018航空計画」で、2031年までに現行機を順次、切り替えると公表。岩国ではF35が海兵隊機の半分程度を占めるようになる。海軍も中国新聞の取材に21年以降、艦載機の一部を置き換える計画を明らかにした。

 F35は日本の航空自衛隊の次期主力戦闘機で、日米同盟強化の象徴でもある。計画通り進めば、岩国はF35の一大拠点になり、航空戦力の「質」が強化される。

 F35を巡っては16年10月、飛行中に出火する事故があった。岩国市と山口県は当時、岩国配備を容認した判断を留保した経緯がある。そうした最新鋭機の配備計画について、現時点で県市に対し、米側や国から詳細な説明はない。

 艦載機移転の経過を振り返っても、国の地元説明に対して疑問符が付いた。国が公表した移転予定と、実際に米軍が移転した時期が大きくずれた。当初、5月ごろだった完了時期も3月末に前倒しされた。

 そもそも開始時期から国と米軍の見解が食い違った。第1陣のE2D早期警戒機は昨年2~5月、岩国を拠点に活動。地元がまだ移転容認の判断を表明していない時期だ。在日米海軍司令部は中国新聞の問い合わせに「E2Dは2月に拠点を岩国に移した」と回答。一方で国は、岩国に再び飛来した8月を「移転開始」とした。

 移転時期のずれは、部隊運用を最優先する米側の都合の影響という。しかし、情報の混乱は、国と米軍のコミュニケーション不足と指摘せざるを得ない。

 基地に関する情報を正確に、迅速に地域に伝える責任が国にはある。移転の過程で表れた情報の混乱には、日本の対米追従の姿勢もにじむ。国に何を言っても変わらないのか―。そんな無力感が地域に広がり、国と地域の溝を深める要因にもなろう。

 朝鮮半島情勢が激変している。今後、岩国基地の役割にどんな変化があるのか不透明だ。米側のアジア戦略と日米安保体制に翻弄(ほんろう)されながら、住民は基地との「共存」を迫られる。

 地域と米軍基地。その関係のありようを、地域の視点で根本から見つめ直す必要があるのではないか。極東最大級となったイワクニの現実が問い掛けている。(久保田剛、明知隼二)

F35
 レーダーに映りにくい高度なステルス性が特徴で「第5世代機」と呼ばれる。米ロッキード・マーチン社が開発主体。空軍仕様のA▽海兵隊仕様のB▽海軍仕様のC―の3タイプがある。F35Bは、短距離離陸と垂直着陸ができる。F35Cは空母での運用を想定し、他のタイプより大きな翼と頑丈な着陸装置を備えている。F35Aは航空自衛隊が42機を導入する方針で、1月から空自三沢基地(青森県)への配備が始まった。

 「移転の先」は終わります。

(2018年6月27日朝刊掲載)

年別アーカイブ