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ひろしま国 8・6探検隊 学校慰霊碑 なぜ爆心地周辺に?

 
Q 平和記念(きねん)公園(広島市中区)の周辺(しゅうへん)で学校名が書かれた慰霊碑(いれいひ)をよく見ますが、なぜですか。

建物疎開に8400人参加

 平和記念公園周辺には、学校名が書かれた慰霊碑がいくつもあるね。なぜ、学校の敷地(しきち)でなく爆心地付近にたくさんあるのだろう。

 その秘密(ひみつ)を解(と)くカギは、当時の子どもたちの学校生活の過(す)ごし方にありそうだ。

■人手不足を補う

 太平洋戦争末期の子どもたちは、今のように学校に行って授業(じゅぎょう)を受ける生活を送っていたわけではない。1944年8月、学徒勤労(がくときんろう)令が発令(はつれい)され、国民学校初等科を終(お)えた生徒(せいと)や学生には軍需産業(ぐんじゅさんぎょう)での勤労奉仕(きんろうほうし)が強制(きょうせい)された。同年末から、内務省(ないむしょう)からの指示で、空襲(くうしゅう)に遭(あ)ったときの延焼(えんしょう)を防(ふせ)ぐため、建物(たてもの)を壊(こわ)して消防(しょうぼう)道路や空き地を作るようになった。これを建物疎開(そかい)という。

 働(はたら)き盛(ざか)りの男性(だんせい)が兵士(へいし)となっていたので、人手不足(ぶそく)を補(おぎな)うために10代の子どもたちが駆(か)り出されたというわけだ。

 原爆資料館(げんばくしりょうかん)(中区)によると、45年8月6日にも国民(こくみん)学校高等科や旧制(きゅうせい)中高生たち約2万7千人が、建物疎開に従事(じゅうじ)したり軍需工場で働いたりしていた。そのうち、約7200人が原爆によって亡くなった。

 その中でも特に被害(ひがい)が大きかったのは建物疎開に参加した動員学徒たちだった。建物疎開の作業は、爆心地の近くの旧県庁付近(きゅうけんちょうふきん)(現(げん)中島町(なかじまちょう)、加古町(かこまち))や市役所付近など7カ所で実施(じっし)されていた。8月6日には40校の約8400人が作業に参加し、約6300人が亡くなっている。

 特(とく)に爆心地に近い旧県庁付近では9割以上、市役所付近でも約8割が死亡した。平和記念公園の周辺に慰霊碑があるのはそのためなんだね。建物疎開に動員されていたのは国民学校高等科か旧制中学の1、2年生だった。12~14歳の子どもたちが犠牲(ぎせい)になった。

 進徳高等女学校(しんとくこうとうじょがっこう)(現進徳女子高)2年生だった金光悦子(かねみつ・えつこ)さん(78)=広島県府中町=は、45年7月から建物疎開作業にかり出されていた。市民に交じって柱に付けた縄(なわ)を引っ張って倒(たお)していたという。8月6日は鶴見(つるみ)橋(中区)付近での建物疎開作業に向かうため中区南竹屋町の学校に集合している時に被爆(ひばく)した。

 同校の3年生だった寺前妙子(てらまえ・たえこ)さん(79)=安佐南区=は、爆心地から550メートルの下中町(現中区袋町)にあった広島中央電話局で電話交換(こうかん)手をしていた。作業に入る前、廊下(ろうか)に整列していた時に空から落ちてくる原爆を見た。「爆弾はシャンデリアのように見えた。何だろうと指をさした時、ドーンという音と一緒(いっしょ)に真っ暗になった」と話す。

■小さな兵隊犠牲

 東へ向かって逃(に)げ、京橋川を渡ろうとした時、爆心地のある西側から逃げて来た人には多くの学生がいたという。「当時の広陵(こうりょう)中学や旧制広島一中(現国泰寺(こくたいじ)高)…服はやぶれ、顔はみんな真っ黒だった」

 元動員学徒たちでつくる広島県動員学徒等犠牲者の会によると、広島市内には、動員学徒の慰霊碑や供養塔(とう)が計30基ある。平和記念公園内にあるのは「動員学徒等犠牲者の慰霊塔」の一つだが、平和大通りや本川沿いなどの平和公園周辺には旧制広島二中(現観音(かんおん)高)や市立造船(ぞうせん)工業学校(同広島市立商業高)など六つの慰霊碑がある。

 寺前さんは原爆で左目を失った。「戦時中、子どもは小さな兵隊といわれていた。子どもが犠牲になるような悲惨(ひさん)な経験を繰り返してはいけない」と語り部活動を続けている。(村島健輔)

なるほどキーワード

学徒の勤労奉仕
 国民学校初等科を終えた生徒や学生を対象に、軍需工場での勤務や建物疎開を担当させること。戦争の長期化で大人の労働力が不足したため、政府(せいふ)の指令で実施(じっし)した。

(2009年7月27日朝刊掲載)

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