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[イワクニ 地域と米軍基地] 山口県議会 相次ぐ批判 艦載機移転 前提揺らぐ

「滑走路沖合移設前より騒音悪化」

 米軍岩国基地(岩国市)への空母艦載機移転を巡り、開会中の山口県議会で、滑走路の沖合移設は騒音軽減策だったはずなのに、現在は移設前より騒音が悪化していると批判が相次いでいる。県は、移設前より騒音などで生活環境が悪化しないことを艦載機移転の受け入れ条件としてきたが、「一定期間の検証が必要で前提は崩れていない」とする。

 国は騒音対策で約1キロ沖合に滑走路を移し、2010年5月に運用開始。県はこの沖合移設前と比べ、基地周辺で騒音などが悪化しないことを受け入れ判断の前提条件とした経緯がある。村岡嗣政知事は昨年3月、国側が示した移転後の騒音予測などに基づき「全体として悪化しない」との見解を示している。

 一方、今年3月の移転完了以降、滑走路が市街地寄りにあった09年当時よりも騒音が大きくなる地域が増加。国などの騒音測定地点では、沖合移設前と比べ「うるささ指数(W値)」が過半数で悪化している。

 具体的には、山口、広島両県の基地周辺の計24地点のうち、4、5月(月間平均)と09年度(年間平均)を比べると過半数の13地点で上回った。中でも大竹市の阿多田島や周防大島町など岩国市周辺での騒音悪化が目立つ。4、5月は空母出港前の艦載機の訓練が活発化した時期と重なる。

 こうした現状を踏まえ、27、28日の山口県議会の一般質問では、議員が「沖合移設前より騒音悪化は明らか」と指摘し、前提条件とする県側の対応をただした。これに対し、県岩国基地対策室は「2カ月の状況で評価はできない。一定期間、実態を把握し検証する」と説明。「移転の前提は崩れていない」との立場を強調した。(和多正憲)

うるささ指数(W値)
 航空機騒音の評価指標の一つ。騒音が続く時間や回数、時間帯を考慮して算出し、数値が大きいほど騒音がひどいことを表す。昼間より生活への影響が大きい夜間を重視し評価する。国は環境基準で、住宅専用地域では70以下と定めている。70は地下鉄車内の音に相当する80デシベルの騒音が日中に1日50回あったときのうるささに相当する。

(2018年6月30日朝刊掲載)

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