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爆心の街・旧猿楽町 米でネガ発見 映像制作に活用

■記者 森田裕美

 原爆で壊滅した広島市の旧猿楽町(現中区)でいち早く再建し、営業を始めた自転車卸業「川本商会」の様子を記録した写真のネガが、米国立公文書館で見つかった。爆心地の街並み復元に取り組む映像制作会社社長の田辺雅章さん(71)=西区=が入手した。

 現在の原爆ドームのすぐ北側にあった川本商会は川本福一さん(1891-1970年)が経営。原爆で焼失した。発見したネガに説明文はなかったものの、1945年秋以降とみられる。再建された店舗前で外国メディアが子どもにインタビューし、市民が見守っている。

 川本商会に関しては45年10月に米軍が撮影した焼け野原の写真の中に、再建中の平屋が写っている。ただ、市公文書館によると復興に向かう占領期に正面をとらえ、市民の暮らしぶりとともに撮影された写真は確認されていない。

 川本さんの四女中谷芳恵さん(85)=廿日市市=によると、自宅でもあった商会で暮らしていた両親と7人きょうだいのうち母と末妹が被爆死した。田辺さんから写真を見せてもらい、「父は戦時中に看板や建具、瓦まで郊外に疎開させていたから、早い時期に再建できた。懐かしい」と目を細めていた。

 田辺さんは爆心直下にも市民の生活があったことを伝える映像を制作中。その取材の過程で米国を訪れ、写真を発掘した。「復興過程の市民の様子が精細に見て取れる。作品に生かしたい」と話している。

(2009年2月5日朝刊掲載)

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