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社説・コラム

『記者縦横』 平和 見つめ直す試合に

■運動部 川手寿志

 原爆が落とされ、広島と長崎が焦土と化したあの夏から、もうすぐ73年。被爆地に本拠地を置くJ1サンフレッチェ広島とV・ファーレン長崎が8月11日に広島市安佐南区のエディオンスタジアム広島で対戦する。サンフレはこの一戦を「ピースマッチ」と名付け、「ノーモア・ヒロシマ、ナガサキ」の願いをサッカーを通じて届ける。

 今季、長崎が初めてJ1に昇格したことから実現した。スローガンは「One Ball.One World. スポーツができる平和に感謝」。サンフレの選手は折り鶴がデザインされたユニホームでプレーする。クラブは、折り鶴を持参した小中学生を無料で招待するなどし、平和の尊さを次世代に継承する機会とする考えだ。

 これまでサンフレの平和への取り組みは認知度が高くなかった。2016年、広島原爆の日(8月6日)に初めて広島で開催したリーグ戦では、選手らによるビデオメッセージや来場者がパネルを掲げるなどして平和を発信。ただ継続性は乏しかった。一方、クラブ名に「平和」の意味を込めている長崎。15年から長崎原爆の日の8月9日前後の数試合は、選手が特別ユニホームで臨むなど積極的に平和を発信している。

 サンフレはピースマッチを機に、選手、スタッフが広島市中区の原爆資料館を見学し、被爆者から体験談を聞くことも計画する。サポーターも含め、平和の在り方を見つめ直すきっかけにしたい。

(2018年7月20日朝刊掲載)

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