×

3.11とヒロシマ

[グレーゾーン 低線量被曝の影響] 甲状腺がん「数十倍に」 福島の子ども 県健康調査 事故影響 意見割れる

 東京電力福島第1原発事故を受けた福島県の「県民健康調査」で、対象となる約38万人の子どものうち少なくとも116人の甲状腺がんが確定し、100万人に数人程度とされる過去の国内の統計に比べ多発している。その原因をめぐり、科学者の間に、早期発見や死に結び付かないがんを診断しているとの見方がある一方、原発事故による被曝(ひばく)の影響を指摘する主張もある。

 県の甲状腺検査は、事故当時の18歳以下と事故後約1年間に生まれた子どもが対象。現在は2巡目に入っており、計116人のがんは昨年末までに確定。がんの疑いも計50人いる。

 甲状腺がん多発の原因は、しこりなどの自覚症状のない子どもまで検査した結果、放置しても死に至らないがんを発見しているとの意見が多数ある。1986年のチェルノブイリ原発事故と比較しても、大気中に出た放射性ヨウ素は10分の1程度と推定されていることや、福島では事故当時の5歳以下からの発見がないことから、被曝の影響を否定している。

 一方で、岡山大の津田敏秀教授(疫学)は異論を唱える。多発の状況は、世界保健機関(WHO)の予測を超えており、早期発見など従来の理由では「説明できない」と指摘。甲状腺がんの発生が今後急増する可能性があると訴えている。

 県民健康調査に助言する有識者の検討委員会が今月公表する中間取りまとめででは、「数十倍多い」と結論づける。被曝の影響については「考えにくい」と強調。同時に「現段階ではまだ完全に否定できない」とも明記し、両論併記とする見通しだ。結論を導くためには「長期にわたる情報の集積が不可欠」として、検査の継続を提言する方針でいる。(藤村潤平、金崎由美)

(2016年3月2日朝刊掲載)

特集面はこちら

年別アーカイブ