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舞台で追う「原爆乙女」 東京の女性劇団 来月15・16日に広島公演

 東京を拠点に活動する30代の女性7人の劇団「On7(オンナナ)」が8月、広島で被爆し、ケロイド治療のため1955年に渡米した女性をモデルにした舞台「その頰、熱線に焼かれ」の広島公演に臨む。被爆地を歩き、渡米治療した女性にも会って役作りをした意欲作だ。

 渡米治療した女性25人のうち1人が手術中に急逝した実話を踏まえ、東京の劇作家古川健さん(39)が脚本を書いた。「原爆乙女」とも呼ばれた女性の苦悩や葛藤、前向きに生きる姿を描く。

 2015年の東京での初演から3年ぶりの再演。8月15日午後7時からと翌16日午後2時から、広島市中区のJMSアステールプラザで開く。東京と北海道でも7、8月に計13ステージを上演する。

 オンナナは青年座、俳優座など老舗劇団に所属するメンバーが13年に旗揚げ。福島第1原発事故の記憶から、核問題を扱う作品に取り組みたいと意見が一致したという。ただ、団員の尾身美詞さん(34)は「いざ演じるとなると、その資格があるのかと怖くなった」と打ち明ける。

 脚本を依頼した古川さんから渡米治療した女性を主人公とする提案を受けるまで、「全員が原爆乙女という言葉も知らなかった」と言う。メンバーは初演に向けて首都圏の被爆者の話を聞き、広島も訪ねて被爆の実態を学ぶことから始めた。

 渡米治療後に米国で暮らす笹森恵子(しげこ)さん(86)が来日した際には、話を聞き、舞台も見てもらった。尾身さんは「被爆者の思いを懸命に想像して、あなたが感じたヒロシマを演じてくれたらいい、という笹森さんの言葉に救われた」と語る。

 団員はことし6月に広島を再訪し、被爆者や遺族の話を聞いた。安藤瞳さん(36)は「被爆者を演ずる責任は重く、稽古に格闘している。演劇の可能性を信じ、前向きに生きた女性の姿を伝えたい」と言う。広島公演は一般3500円、25歳以下2千円、学生千円。オンナナ☎080(4804)0077。(田中美千子)

(2018年7月26日朝刊掲載)

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