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尾道定住 決意の就農 原発事故で避難した長野さん 観光農園目指し開墾

 福島第1原発事故を機に広島県尾道市瀬戸田町に自主避難した長野寛さん(44)が、同市因島三庄町で特産のかんきつ類の無農薬栽培を始める。避難生活の中、定住を決断。観光農園経営を目指し、一歩を踏み出した。ハッサクなどの苗木を植える3月を前に、開墾作業に汗を流している。(鈴木大介)

 2012年3月に購入した約1ヘクタールに、ハッサクやミカン、レモンの苗木計約120本を植える計画。一人で雑木の伐採などに励む。かんきつ栽培は初めてで、剪定(せんてい)方法などは地元農家から教わる。

 できるだけ耕さずに自然に近い環境で育てる農法を試みるという。近く、同町にある数年間手つかずだったハッサク畑も借りて整備を進める。

 長野さんは福島第1原発から約50キロ離れた福島市で妻絹花さん(37)、長女ののかちゃん(4)と暮らしていた。自給自足を目指して米や野菜を栽培し、冬はスキー場で働き生計を立てていた。11年3月11日に東日本大震災が発生。放射線被曝(ひばく)を懸念し、3日後に瀬戸田町の親戚宅に身を寄せた。

 避難生活の中で近所の人の温かさに触れ、励まされる中で家族と相談し12年3月に定住を決めた。「就農して早く生活を軌道に乗せたい。今できる最善のことを頑張っていきたい」。そう再出発を誓っている。

(2013年1月17日朝刊掲載)

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