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被爆旧銀行の鉄扉保存 再開発ビルに設置

 広島市南区のJR広島駅南口Bブロック市街地再開発事業で、事業主体の再開発組合は16日、取り壊しが決まった被爆建物の旧住友銀行東松原支店の鉄扉をモニュメントとして保存する方針を決めた。鉄扉は原爆による爆風で湾曲した現状のまま、新たに建設する再開発ビルの外壁に取り付ける。市はモニュメント保存として2例目となる補助金交付を検討している。

 建物は大正期の1921年に建てられ、爆心地から1・9キロ離れている。窓部分を覆う鉄扉は1枚が高さ約2メートル、幅約0・6メートルで、保存するのは建物西側にある2組計4枚。爆風でゆがみ、原爆の威力を今に伝える。

 設置場所は10階建て東棟の猿猴川に面した1階外壁で、2枚をガラスカバーで覆って保存する。事業費は480万円を見込む。

 再開発組合は、アーチ状の装飾が特徴的なれんが造りの外壁を切り取る案も含め、モニュメントによる一部保存を検討。外壁は被爆の痕跡が乏しく事業費も10倍以上に膨らむため、16日の理事会で鉄扉の保存を全会一致で決めたという。

 市は組合の方針決定を受け、補助金交付の検討に入る。93年、民間の被爆建物の保存・継承を目的に創設した制度は、3千万円を上限に保存工事の費用の4分の3を支給する。これまで18件が対象となったが、モニュメント保存への補助は広島赤十字・原爆病院(中区)旧本館の窓枠の1件しかない。

 市国際平和推進部の石田芳文・被爆体験継承担当課長は再開発組合の保存方針を歓迎する一方、「被爆68年を迎え、今回と同様のケースが続く可能性もある。モニュメント保存への補助の在り方を整理したい」と話している。(藤村潤平)

広島市の被爆建物
 市は爆心地から5キロ以内の建物を台帳で管理し、現在は88施設を登録している。国や市、独立行政法人など公共機関の所有が20施設、民間が68施設。爆心地から2キロ以内は、平和記念公園レストハウス▽広島アンデルセン▽旧日本銀行広島支店▽本川小の一部―など17施設しかない。

(2013年1月17日朝刊掲載)

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