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平山氏 友情の「きのこ雲」色紙 6日から尾道で初公開

 尾道市瀬戸田町出身の日本画家、平山郁夫氏(写真・1930~2009年)が広島原爆のきのこ雲を描いた色紙が見つかった。広島市内で共に被爆した旧制修道中の同級生に、1965~70年ごろに贈ったとみられる。同級生の遺族から寄託を受けた平山郁夫美術館(同町)が、6日から初公開する。

 平山氏は、学徒動員先の広島陸軍兵器補給廠(しょう)の渕崎材木置き場(現在の広島市南区仁保)で被爆。「恐ろしい体験を絵にしても傷口を広げるだけだと思ったから、原爆の絵も描かずにきた」と語り、79年の「広島生変(しょうへん)図」以外、原爆の惨状を直接描いた作品はない。

 色紙は墨一色で、市街地から渦を巻いて立ち上るきのこ雲を描いている。右下に「思 昭和二十年八月六日」、左上に「修道中第三学年第一組 於渕崎 正畠明雄 小尻正俊 平山郁夫」などと記している。

 正畠さんと小尻さん(いずれも故人)は、平山氏と中学の寮で同室だった。補給廠で共に被爆したが生き延び、65年に平山氏が東京で初の個展を開いた時に再会した。色紙はその後、小尻さんに贈られ、遺族が保管していた。

 被爆体験は、平山氏が戦後、仏教伝来シリーズなど平和の祈りを込めて描き続ける画業の原点となった。同美術館の幸野昌賢学芸員は「原爆は平山氏にとって軽い気持ちでは描けないテーマ。3人の深い友情を示したかったのではないか」と話している。(久保木要)

(2018年8月2日朝刊掲載)

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