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核禁条約「一里塚に」 8・6平和宣言 広島市が骨子

 広島市の松井一実市長は1日の記者会見で、被爆73年の原爆の日に平和記念式典で読み上げる平和宣言の骨子を発表した。被爆者の思いが広まりつつあるとしながら、核兵器を巡り、世界に緊張が高まっているとの懸念を表明。昨年7月制定の核兵器禁止条約を「核兵器のない世界への一里塚」とするよう主張し、日本政府を含めた世界の指導者に核兵器廃絶への取り組みを求める。

 宣言では、条約制定に貢献した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン)、本部スイス・ジュネーブ)のノーベル平和賞受賞で被爆者の思いが広がったと評価。被爆者の訴えは、核兵器を持つ誘惑を断ち切るための警鐘だと強調する。被爆当時20歳だった男性2人の体験談を引用する。

 日本政府には、国際社会が廃絶に向け、対話と協調を進めるための役割を果たすよう訴える。「核の傘」を頼り条約に背を向ける日本政府に条約への署名、批准を求める意図を込めた。

 朝鮮半島の非核化を巡っては、市民社会は朝鮮半島の緊張緩和が平和裏に進むことを希望していると述べる。その上で、多様性を尊重し、互いに信頼関係を醸成して核兵器廃絶を人類共通の価値観にするよう呼び掛ける。

 松井市長は「人類が再び重大な過ちを犯さないため、廃絶への取り組みが為政者の理性に基づく行動で継続するようにしなければならない」と述べた。(野田華奈子)

<平和宣言骨子のポイント>

■核抑止や「核の傘」という考え方は、核兵器の破壊力を誇示し、相手国に恐怖を与えることで世界の秩序を維持する不安定で危険極まりないものと指摘
■ICANのノーベル平和賞受賞で被爆者の思いが広まる一方、核兵器を巡る各国間の緊張関係を危惧。核兵器禁止条約を核兵器のない世界への一里塚とするための取り組みを進めるよう世界の指導者に訴える
■市民社会は朝鮮半島の緊張緩和が対話で進むよう希望しているとし、核兵器廃絶を人類共通の価値観にするべきだと呼び掛ける
■国際社会が核兵器のない世界の実現に向けた対話と協調を進めるための役割を果たすよう、日本政府に求める

(2018年8月2日朝刊掲載)

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