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被災バイオリン復興の調べ 東北の人々に癒やしを

 東日本大震災の津波で壊れた岩手県大槌町のバイオリンが、音楽による心の復興を目指す有志の手で修復され、同県釜石市の小学生によって新しい音色を奏でている。広島市中区の会社員松崎覚さん(40)が小学生時代に使っていた子ども用の楽器で、被災した両親と一緒に大槌町の実家を片付け中に見つけた。

 バイオリンは鉄筋3階建ての2階にあった。ケースのまま海水に沈み、胴の継ぎ目が口を開け、板はふやけた。譲り受けた盛岡市の弦楽器工房が直し、昨年3月に釜石市の有志が設立した子どものバイオリン教室「くらぶ海音(うみのおと)」(千葉教子事務局長)に渡った。

 教室は4歳から中2までの16人が参加し、大半が初めてバイオリンに挑む。松崎さんのバイオリンは小学3年佐々木波香さん(9)に貸与された。

 佐々木さんたち4人は18日、被災地と教室を支援する佐渡裕さん(51)が指揮する兵庫芸術文化センター管弦楽団の定期演奏会(兵庫県西宮市)に招待されている。松崎さんの両親も会場を訪れ、佐々木さんと初めて対面する。

 幼少期の思い出が詰まった実家は2011年8月に解体された。松崎さんは「危機を乗り越えて生まれ変わった楽器が、被災地の役に立ちうれしい。バイオリンの音色で、より多くの人の心を癒やしてほしい」と願う。

 現在暮らす横浜市から演奏会へ駆け付ける父豊司さん(77)も「頑張って練習しています、という佐々木さんの年賀状が届いたばかり。早く会って励ましたい」。被災地で音楽が結んだ人の絆をかみしめる。(渡辺敬子)

(2013年1月18日朝刊掲載)

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