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組曲「ヒロシマ」CDに 広島の詩人 松尾静明さん作詞

 広島市東区の詩人、松尾静明さん(78)が作詞した組曲「ヒロシマ」が、川崎市の市民合唱団によるライブ音源のCD「みらいへ…」に収録された。原爆で大切な人や物を失った嘆きと絶望、平和への祈りが、歌声と旋律に乗って平易な言葉で届く。

 小中学生の詩や作文を募る鈴木三重吉賞の選者も務める松尾さん。2013年、「ゆうきあい」のペンネームで、既発表も含む六つの詩を合わせて組曲のための一編を完成した。

 知人の作曲家朝岡真木子さん(東京都)が、川崎の「合唱団いちばん星」のコンサートで初演するために曲を付け、1月の公演で他の数曲とともにCDに録音された。

 冒頭で人々の平和な生活に戦争の影が落ち、原爆が投下される。「みらい」と名付けた幼い娘を失った親は、その子が体験できなかった学びや出会いを思い、喪失感に包まれる。被爆の後遺症で髪を失った若い女性は、夢と希望に満ちた青春をつかめなかった無念さを告白する…。

 最終章は、力強く咲くキョウチクトウに、「夢と未来を焼かれた少女」が平和を祈る姿を重ねた。「ふたたび こころを こわさないで/ふたたび からだを くずさないで」「この世界が/花のこころで/愛のこころで/歌のこころで/満ちあふれますように」

 松尾さん自身に被爆体験はないが、広島の詩人として被爆者の手記を読み込み、詩作に生かしてきた。「音楽の力で、心の奥深くまで詩が届いてくれる。想像力を羽ばたかせながら聴いてほしい」と話す。

 CDは2千円。合唱団いちばん星☎090(8109)3829。(治徳貴子)

(2018年8月3日朝刊掲載)

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