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被爆者援護法制定に尽力した故浜本元労相の回顧録刊行

■記者 下久保聖司

 昨年1月に死去した浜本万三・元参院議員(広島)の回顧録「花は想う人の側に咲く」を、広島大文書館が刊行した。労働運動を通じて旧社会党に加わり、国会では被爆者援護法制定に向け尽力。ヒロシマへの視点を絶やさなかった政治家の信条がうかがえる。

 小池聖一文書館長ら教官3人が2006年から死去の約2カ月前まで計20回取材。オーラル・ヒストリー(口述記録)形式でまとめ、浜本氏の座右の銘を表題にした。

 県労働組合会議議長として指揮したデモ行進を「前を歩くのが非常に名誉」「最後のほうにはしっかりとした組をつける」と回顧。 統率力や人を動かす巧みな力は、1974年から3期18年間の参院議員時代も発揮した。「野党のために国会(議会制民主主義)はある」と強調する一方、自民党との交渉チャンネルも保った。

 村山内閣の労働相時代は「被爆者は国家の戦争責任の犠牲者」と訴え、後の被爆者援護法制定の礎を築いた。小池館長は「戦後の労働運動や、55年体制の崩壊など時代局面がよく分かる」と解説する。四六判、316ページ、3360円。

(2009年2月19日朝刊掲載)

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