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広島平和記念式典 核廃絶へ「理性を」 平和宣言 世界の指導者に訴え

禁止条約を一里塚に

 米国による原爆投下から73年となった6日、広島市は平和記念公園(中区)で原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)を営んだ。松井一実市長は平和宣言で、世界は東西冷戦期の緊張関係を再現しかねない状況だと指摘。世界の政治指導者に、理性を持って核兵器廃絶に取り組むよう訴えた。

 松井市長は、核兵器禁止条約制定に貢献した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶キャンペーン」(ICAN、本部スイス・ジュネーブ)が昨年12月、ノーベル平和賞を受賞したことに触れ、「被爆者の思いが世界に広まりつつある」と評価した。

 一方で、「自国第一主義」の台頭や進む核兵器の近代化を挙げ、冷戦期のような緊張関係が再び高まる可能性を強調。政治指導者に「条約を核兵器のない世界への一里塚に」と要請した。米国の「核の傘」に依存し、条約に反対する日本政府には、核兵器なき世界の実現に向け、国際社会が対話と協調を進めるよう促す役割を求めた。

 朝鮮半島の非核化を巡っては、「市民社会は朝鮮半島の緊張緩和が対話によって進むことを希望している」と歓迎。市民たちが「ヒロシマ」を語り伝え、政治指導者が核兵器廃絶に向けた行動を理性に基づき継続するよう呼び掛けた。

 午前8時から始まった式典には被爆者や市民、政府関係者、各国大使たちが参列。松井市長と遺族代表2人が、この1年に死亡が確認された5393人の名前を記した広島の原爆死没者名簿を原爆慰霊碑に納めた。名簿は115冊計31万4118人分になった。

 原爆投下時刻の午前8時15分、遺族代表の自営業上峠賢太さん(33)=中区、こども代表の三田小6年森下碧さん(12)=安佐北区=が「平和の鐘」を突き、全員で黙とう。平和宣言に続き、こども代表の牛田小6年新開美織さん(12)=東区=と五日市東小6年米広優陽君(12)=佐伯区=が「平和への誓い」を発表。被爆者の思いの受け継ぎ、伝えることを誓った。

 厚生労働省によると、被爆者健康手帳を持つ被爆者は3月末時点で15万4859人、平均年齢は82・06歳。(野田華奈子)

[平和宣言の骨子]

■世界にいまだ1万4千発を超える核兵器がある。核兵器がさく裂したあの日の広島の姿を再現させ、人々を苦難に陥れる可能性が高まっている。被爆者の訴えは核兵器を手にしたいという誘惑を断ち切るための警鐘で、その声に耳を傾けることが一層重要になっている
■ICANがノーベル平和賞を受賞し、被爆者の思いが世界に広まる一方、自国第一主義が台頭し、核兵器の近代化が進む。核兵器廃絶への取り組みが、各国の政治指導者の「理性」に基づく行動によって「継続」しなければならない
■指導者に対し、核兵器禁止条約を核兵器のない世界への一里塚とするための取り組みを要請。日本政府には、条約発効に向けた流れの中で、国際社会の対話と協調を進める役割を果たすよう求める
■朝鮮半島の緊張緩和が平和裏に進むことを市民社会は希望している。核兵器廃絶を人類共通の価値観にしていかねばならないと呼び掛ける

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